野伏
CHANGES DESTINY...
【7】
「!!」
「どっどうしたのレゴラス?」
彼女が此処裂け谷に来てから数日が経ったある日。
部屋で本を読んでいたの元にレゴラスが飛び込んできた。
普段の彼からは想像もつかないほどに焦った表情は十分に彼女を驚かせるものだった。
「指輪所有者が着いたんだ。負傷している!」
「えぇ!?」
「おいで!」
驚いた表情のままのの腕を掴むとそのまま走り出す。
部屋にはアルウェンとガンダルフ。そしてエルロンド卿の姿がある。
入り口にはグロールフィンデルが立っていた。
「フィンデルさん!」
「様…。」
「フロドは?」
「エルロンド卿が治療の最中です。」
「一体何があったんだい。」
「ナズグルよ。」
「アルウェン姉様!その傷!?」
「大丈夫よかすり傷だから。」
アルウェンの頬にはうっすらと傷がある。
は彼女の後ろ、今だ治療しているエルロンド卿を見る。
「彼の傷は‥?」
「腕をナズグルの剣に傷付けられたの…。危ない状況だわ。」
僅かに見えるフロドの顔は青白く生気の抜けた顔色だ。
彼の小さな掌を握り厳しい表情で見つめるガンダルフ。
「モルグルの刃…。」
「知っているの?」
「ナズグルの剣‥ですね。」
「えぇ。でも大丈夫。お父様が治して下さるわ。」
「そうだよ。なんたってエルロンド卿は医学の大家。彼を救ってくださる。」
「…うん。そうだよね。」
レゴラスに肩を抱かれながらは不安げにフロドの顔を見つめていた。
その日の夕方に指輪所持者、フロド=バギンズの仲間達と一人の野伏が裂け谷に到着した。
その夜、は傷ついたフロドの元へ訪れた。
「あ…。」
部屋には先客が居た。
フロドと同じホビット族と共に裂け谷にやってきた一人の野伏。
「(アラゴルンだ…。)」
「‥誰だ?」
「あっあの‥始めまして。といいます。」
「………。」
慌ててお辞儀をしたを訝しげに見据える。
「えっと‥貴方は?」
「…アラゴルンだ。」
「アラゴルンさん。フロドさんは‥?」
今だ彼女を怪しむアラゴルンは座っていた椅子からゆっくりと立ち上がる。
彼女はアラゴルンの不躾な視線にもめげずベットに近寄っていく。
ベットに寝ているフロドの顔色はいまだに青白いもののエルロンド卿の治療はうまくいったようだ。
「よかった…。」
「…………。」
フロドを見つめふっと笑みを浮かべた彼女の横顔を見つめる。
するとと目が合った。
「あっごめんなさい。」
「いや…。」
「でもよかった…フロドさん酷い怪我だったから…流石お父様…。」
「お父様‥?」
にこにこと笑みを浮かべるを見ながら眉を顰める。
「あっはい。エルロンド卿は私の養父です。」
「君は‥人間なのか?」
「…ハーフエルフだそうです。」
「?」
含みの在る言い方にまたも眉間に皺を寄せつつ失礼しましたと部屋を出て行こうとするを追いかける。
「?…なんですか?」
「少し、話をしてもいいかな?」
「あ…はい。」
首を傾げながら彼について部屋を出る。
二人は月光が降り注ぐベランダにやってきた。
置かれている椅子に腰掛ける。
はそのまま空に輝く月を見上げる。
柔らかな月光に包まれた彼女の姿は月の女神の様に麗しい。
長く艶やかな黒髪は闇に溶け、色白の肌は月光に透けるよう。
アラゴルンは見惚れていた事に気付くと慌てて視線を逸らす。
「それでお話って??」
「あっあぁ。」
彼女の余りにも無邪気な問いかけに拍子抜けしつつも話を切り出す。
「さっきの君の話し振りでは‥自分がハーフエルフだという事を知らなかったのか?」
「はい‥。お父様とガンダルフに教えてもらいました。」
「君は…一体…。」
この場合‥話した方がいいんだろうか‥。
やっぱり王様には話した方がいいよねぇ;;
「えっと‥簡潔に言えば私は此処中つ国の者ではありません。」
「なっ!?」
「私は別の世界から来ました。」
「別の世界…。」
「はい。私は指輪に繋がる救世主だと…。」
「指輪‥あの一つの指輪に関係しているのか。」
「この世界に私と良く似た人のことを唄った物があるそうです。」
アラゴルンは彼女の話しを聞きながら顎に手を当て何事か考えているようだ。
「それでお父様が私が元の世界に帰れないかもしれないからと、養女にしてくださいました。」
「そうか…。」
「アラゴルンさんは‥」
「アラゴルンでいい。。」
「あっはい。アラゴルンはお父様とは親しいのですか?」
「あぁ。私も幼い頃に裂け谷に居たんだ。」
「それって‥。」
「養子としてな。」
「へ―‥じゃあアラゴルンはお兄さんですね。」
「‥そうなるか?」
無邪気に笑みを浮かべるは先程とは打って変わって幼子の様に見える。
「そうだ!アラゴルンは剣が使えますよね?」
「あっあぁ。それがどうしたんだ?」
「もしよければ明日にでも手合わせしてもらえませんか?レゴラスが相手してくれなくて…。」
「レゴラス?彼も来ているのか。」
「はい。闇の森からずっと此処まで一緒でした。」
「闇の森から?」
「私は此方の世界に来た時に闇の森で見つかったそうです。」
寝てたみたいですと人事の様に微笑むに半ば呆れつつアラゴルンは疑問を口にした。
「だが、何故剣を?」
「レゴラスが剣の手合わせをしてくれないんです。毎朝鍛錬はしてますけど…一人だと感覚がつかめなくて。」
毎日剣の鍛錬をしているという少女を見て眉を顰める。
「‥まさか戦うつもりなのか?」
「そのために私はこの世界に来たんです。…守る為に。」
「………。」
真剣なそして強い眼差し。
彼女は本気だ。
「…分かった。時間のあるときでいいか?」
「本当ですか!!やったvv」
「まぁ…時間は余りあるか…。」
「そういえば、フロドさんのほかにホビットさん達が居るんですよね。まだ会ってないんですよ〜。」
「彼等は疲れて寝てるだろう。明日には腹をすかして起きてくるさ。」
「友達になれるといいなぁvv」
「人懐っこい奴らだ。すぐに仲良くなるだろう。」
「へ〜。楽しみvv」
穏やかな笑みを浮かべる彼女はエルフというには表情がとても豊かだ。
「そろそろ遅い‥話の続きは明日にしよう。」
「はい!じゃあ明日、剣のお相手よろしくお願いします!!」
元気良く立ち上がった彼女に目線を合わせながらアラゴルンも笑みを浮かべた。
「それじゃあ。アラゴルン。おやすみなさい!」
「あぁ。おやすみ。」
が去った後暫く空に浮かぶ月を眺めている。
「…唄か。」
「あら。可愛いい妹に何を話していたのかしら?」
「アルウェン‥。」
物思いに耽っているアラゴルンの後ろからやってきたのは夕闇姫。
彼の隣に座る。
「は強いわ。心配しないで?」
「だが、あんなに幼い少女が…。」
「その言葉、明日返上されるわよ?剣の稽古に付き合うんでしょう?」
「あぁ‥?」
アルウェンは不敵な笑みを浮かべる。
「そうそう。妹に手を出すなんて事考えていないわよね?」
「なっ!?誰が…。」
「それならばいいけれど…。お父様もとても可愛がっているのよ。」
「エルロンド卿が‥。それは過保護だろうな‥」
「ふふ‥それを言うなら裂け谷のエルフ全てがあの子には過保護よ。」
「そうなのか?」
「えぇ。あのエレストールも彼女にはメロメロだもの。」
「ハハ‥それはすごいな。」
「あの子はきっと大きな戦いへ行くわ。」
「………………。」
「貴方も恐らく共に行く事になる。」
アルウェンは真剣な瞳でアラゴルンを見つめる。
「お願いがあるの。」
「なんだ?」
「あの子に変な虫がつかないように良く見ていて。もし変な虫がついたら…。」
「…そうだな。確かに。」
「特にレゴラスは要注意よ…。」
「…分かった。」
何故か妙に納得できてしまうアルウェンの言葉にアラゴルンも深々と頷く。
どうやら彼も相当な”過保護”なようだ。
後記
アラゴルン達を先に出さないといけないのにっ!?
ボロミアを先に出しちゃいました;;;慌てて書き直し中です。
次はホビット〜!!
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