MATRIX-10






THE INNOCENT PROGRAM
【 10 】
























小雨が降り注ぐなかは薄眼を開けて声の聞こえた方へ視線を向けた。
霞む視線の先には黒いシルエット。
は左右に頭を振りゆっくりと起きあがった。


「ッ…此処…?」


彼女は小首を傾げ周囲に視線を這わせる。
辺りは何時の間にか高いビル街になっていた。
彼女の視線は再度自身の目の前に立つ彼に向かう。


「スミス…さん。」


は大きく瞳を開く。
確かに目の前に居るのはスミスだが、彼女はそれ以外も感じていた。
どこか懐かしいような可笑しな感情。


「まさか……オラ‥クル?」

「あぁ。君は分かるのか。」

「!?」


は震える指先で口元を覆った。


。」

「サティ…セラフも…?」

「あぁ。"私"となった。」

「………………。」

「全てが私となれば自由等関係なくなる。私の物になれば…。」


彼女を無視して己の感情を露にするスミスに。
は眉を顰める。


「スミスさん!」

「ッ……。」

「そんなの間違ってる。………自分独りしか居ない世界なんて寂しすぎますよ。」


は震える拳を押さえ唇を噛み閉め始めてスミスをキツク睨んだ。
彼女の表す始めての激しい怒りに彼はサングラス越しに瞳を見開いた。


「私の世界って…そんなの自分の殻に閉じ篭ってるだけじゃないですか!!」


感情が昂ぶっているのか彼女の声は涙混じりなっている。


「どうして…どうして歩み寄ろうとしないんです?頼ってくれないんですか?」

「…………。」

「私…私じゃだめですか?支えになれないんですか?」

。」

「もうこんな事しちゃだめですよ!!!きっとスミスさんにも居場所が見つかる!だからッッ!!」


はスミスの胸に拳を叩き付け涙を零す。
スミスは戸惑いながらも彼女の震える肩を抱く。


「ッ……。」

。私はもう止まらない。止める事が出来ない。」

「そんなっ!」

「………君が私の光だ。君だけが存在してくれれば何も望まない。」

「そっそんなこと言わないでッ!!そんなッッ!!」

「もうすぐ此処へアンダーソン君が来る。。君は此処に居るんだ。」

「駄目です!」


スミスはから身体を離した。
は追い縋ろうとするが思わず足を止める。
すぐ近くに聳え立つビルの窓から何百、何千のスミスが彼女を見ていた。


「ッ!?」

「……君に逢えてよかった。。」

「スミス…さんッ。」


静かに歩み去る彼の後姿をみつつはその場に座り込んだ。


「うっ…ひぅ…ッッ…こ…んな…。」


嗚咽と涙では泣き崩れる。
その時。


…』



「え…?」



『もう一度…あなたに…。』



「トリニティ…?」

























「うっ…ゲホッケホッ!…はぁ…ッ…私も…もう駄目ね…」


マシーンシティの建物に激突したロゴスの船内ではネオを送り出したトリニティの命の灯火が消えようとしていた。


…最後にもう一度…逢いたかった…ッ…。」

『トリニティ…?トリニティッッ!!!』

?これは…。幻…?」

『どうしてッ!!どうしてぇ!!!』


霞む視界に愛して止まない少女の姿が淡く映った。
柔らかな青色に包まれたはトリニティの姿を見て悲鳴を上げる。
トリニティは破損した船体のパーツに身体を貫かれていた
はトリニティのすぐ側に座り込むと彼女の躯に触れた。
が触れた部分が淡く光る。


「本当に…なの…ね?」

『トリニティッ!!』

「…約束…守れそうにない…わ。私は…もう…駄目…。」

『そんな…そんなことっ言わないでよ!』


トリニティは震える指先をの頬に触れる。
透ける彼女の躯に微かに触れた。
はトリニティの手をぎゅっと抱き締める。


『嫌だッ!!死んじゃだめだよッッ!』

…ごめんなさい…ッ。」

『トリニティッ置いてかないでッッ!!!』


の脳裏に数年前、父と母を無くした時の情景が浮かび上がる。
彼女の悲痛な叫びが響いた。
徐々に冷たくなっていくトリニティの身体を抱きしめはぼろぼろと涙を零した。


『やだ…ッ…やだぁああッッッ!!!!』


彼女の叫びが響いた瞬間の身体から眩い光が溢れた。
光が徐々に縮小し、光が消えた後にはの姿も倒れていたトリニティの姿も消えていた。






















後記

なんだかシリアスモード中ですね…ここら辺はしょうがないかと‥
次はトリニティ救済ですね。といっても本編でもなんだかかなり曖昧な感じですが。
やっぱりしっかりと助けたいですからね!




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