MATRIX-11






THE INNOCENT PROGRAM
【 11 】
























「トリニティ!」


の声…?
私は…死んだの?
でもどうして…こんなに暖かいのかしら?


「トリニティ!!」

「ッ………?」


トリニティはうっすらと瞳を開け眩しげに瞳を細めた。
目の前には涙に濡れたの顔が見える。


?」

「ッッ!!!」


トリニティの声を聞いた途端は彼女に抱きついた。
いまだ倒れたままを抱きとめ彼女はゆっくりと身体を起こした。


「此処は…?私…一体…。」

「よかった!よかったよぉ!!」


トリニティは泣きじゃくるの頭を優しく撫でながら自身の身体の変化に気が付いた。
彼女の意識が途切れるまで確かに現実世界にいたはずだ。
だが、今彼女の姿はマトリックス内に進入している時と同じような服装になっていた。


…これは一体…?私は死んだはずじゃ…?」

「ぅ。ひぅ…っ。」


ぼろぼろと涙を零すの頭を優しく撫でる。
何度かそれを続けると彼女は徐々に落ち着いてきたのか嗚咽が無くなってきた。


「あのね…私にも良く分からないんだ…あの時。どんどんトリニティの身体が冷たくなって…それで…。」


はトリニティの命が消えようとしていた時を思い出しまたも涙を滲ませる。


「トリニティを助けたい。置いていかないでって強く願ったら…急に意識が遠のいて…。」

「気が付いたら此処に?」

「うん。」


彼女達は改めて周囲を見渡した。
白い。一点の汚れもない広い部屋。


「ここってもしかしてマトリックスのソースなのかな?」

「確かに…侵入する前の個人スペースにも似てるわね…。」

「でも今マトリックス内はスミスさんの力で‥ぁ…ネオ!ネオは何処にいるの!?」

「ぇ…?それは…分からないわ。ネオはマシーンシティの中心部に向かったの。」

「マシーンシティ…?」

「えぇ。」

「スミスさんはもう少ししたらネオが来るって言ってた…それじゃあもしかしたらもうマトリックス内にいるのかも…。」


は思案気に眉を寄せる。
トリニティは首を傾げ自身の身体を見ている。


「そういえば…トリニティ身体は大丈夫?」

「えぇ。それがどこも可笑しな所はないのよ。」

「でも肉体が負傷すれば精神の方にも影響が出るんだよね?」

「そうね。肉体が死ねば精神も死ぬはずなんだけど…。」

「うーん…でもともかく今はネオとスミスさんだね。」

「………スミスは一体なんなの?」

「スミスさんは今マトリックス内の殆どのプログラムや精神体を乗っ取ってるみたい。」

「…ベインと同じね。」

「自分でも止める事が出来ないって言ってた…でも…でも止めないと。」

「ネオならきっと…。」

「でも!なんか引っかかるんだ…まるでこのままじゃスミスさんもネオも居なくなってしまうみたいで。」

…。」

「私。二人の所に行ってくる!って……でも行けるのかな?」

「そうね…確かに…。」


二人は立ち上がり周囲を見渡す。


「なんだか先が延々続くような…。」

「そもそも此処は何なのかしら?」

「うーん……。あれ?」

「どうしたの?」

「鍵が…。」


はコートのポケットに入れたままの鍵を取り出した。
鍵は彼女の掌の上で淡く青色に輝いている。


「これは一体…?」

「もしかしてこの鍵でマトリックスに戻れるのかな?」

「その鍵は確か…キーメイカーが作った…。」

「「無垢なる救世主の為の鍵!?」」

「でも無垢なる救世主って私の事なのかな?」

「あなた以外誰がいるのよ。」

「そっそうか…うーん。でも鍵穴なんてないし…。」


は鍵を手に取りながら虚空を見つめる。


?」


は徐に何もない空間に鍵を差すような動作をした。
ゆっくりと鍵を回す。
すると、鍵を中心に光が溢れ何もない空間を切り裂き一枚の扉が現れた。
そしてカチリと小さな音が響いた。
は鍵を持ったまま驚いた様子でトリニティを見上げる。


「…………………なにこれ。」

「扉…。ね。」

「わわ…適当にやって見ただけなのに!?」

「もしかしてこれがマトリックスへ続く扉…かしら?」

「そうなのかな?それじゃあ此処からネオ達の所に行けるのかな?」

「恐らく…。」

「トリニティは一緒に行く?」

「えぇそうね。此処に居ても仕方がないし…でも私も通れるのかしら。」

「どうだろう…。」


は鍵をゆっくりと抜き扉に手をかけた。
そっと中を覗きこむと確かに扉の中は彼女が最後に見たビルディングが見える。


「………なんか雨が凄くなってる。」


確かに彼女がいた時より、マトリックス内の状況を表すかのようにどしゃぶりの雨が降っている。
は恐る恐る中へ入った。
その後をトリニティが出ようとするが、扉が薄くなり始める。


「なっ!?」

「とっトリニティ!?」


彼女が手を差し伸べるより早く扉が消え去った。
は悲しげに顔を歪ませるが降り注ぐ雨で濡れた髪を振るい上空を見上げた。


「早く二人を探さないと…。」























後記

トリニティについての詳しい所はまた追々。
大分クライマックスに近づいてきましたね!!
ネオとスミスですねぇ〜。




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