MATRIX-9






THE DREAM AND ACTUAL GORGE
【 9 】
























「セラフ…?」

。」

「如何したのこんな時間に?」

「貴女こそ。眠れないんですか?」

「うん…。」


月明かりに照らされた部屋で、彼は一人で杯を傾けていた。
そこに白いパジャマのみを着たがやってくる。
彼の隣に座り込みセラフの手にある杯に目をやる。


「そんな格好では風邪を引きますよ?」

「大丈夫だよ〜。ねぇそれお酒?」

「えぇ。」


テーブルの上には酒瓶が置かれている。
はそれを手に取り眺める。


「漢字だ―‥中国のお酒かな。」

「そうです。」

「セラフお酒飲むんだね〜。」

は駄目ですよ?」

「むっ。だから子ども扱いするな―!」


セラフは溜息を付くと杯をテーブルに置き酒を注ぐ。
は興味津々に見ている。そんな彼女に苦笑すると注いだばかりの杯を彼女の目前にまでもって行く。


「なっなに?」

「子供じゃないんでしょう?」

「っ…。そっそうだよ!」


口元が笑ったセラフにはムキになって杯を取るとぐいっと一気に飲み干す。


「ふぁ…っ…あっつぅ!!」

「慌てて飲むからですよ;」


強い酒を一気に流し込んだためは激しく咳き込む。


「ケホッ‥ッ…何これ…辛っ。熱っ!」


涙の溜まった瞳でセラフを見上げ抗議する。
彼はの背を優しく撫でながら苦笑する。


「状元紅は度数の高い酒です。一気に飲む物じゃありません。」

「うぅ。そんなの知らないよっ…ケホッ!」

「水を持ってきます。」

「うん‥。」


セラフはを置いてキッチンへ行くとコップに水を汲む。
今だ咳を続ける彼女に水を渡す。


「ぁりがと……。ふ〜…きつかったぁ‥」

「全く。無理をするからです。飲めないのでしょう?」

「だってさぁ…。」


手にしたコップを見つめ頬を膨らませるを見ながら、杯に残っていた酒を飲み干す。


「セラフお酒好きなの?」

「…別に好きというわけではないです。」

「…お酒強いね。」

「どうでしょう?」


彼は表情一つ変えず、新しい酒を杯に注ぐ。
それをまた口に運びこくんと飲み干す様をは凝視している。


「なんです?」

「あぁ…いや。男の人がお酒飲んでるのってそういえば始めて見るなぁって。」

「……………。」

「お父さんはお酒全然飲まなかったから…。」

「……そうですか。」

「何だか色っぽいね。」

「‥は?」

「だから、お酒飲んでるセラフが!」

「はぁ‥?」


の突拍子も無い言葉に彼はハテナ顔だ。
彼女は笑みを浮かべそのまま隣の彼の肩に自身の頭を預ける。


?」

「本とはね…ネオ達に付いていくの少し怖いんだ…。」

「!」

「だって…自分がプログラムって知らなかったし戦った事なんてあるわけない。だから少し怖いよ‥」

…。それなら…」

「でも。私を必要としてくれる人がいるなら頑張りたい…ちょっと怖いけど。」

「…………。」

「何か矛盾してるよねぇ〜。」


可笑しなことを言ってごめんと言いかけた彼女の身体が止まる。
杯が下に落ちて割れる音が静かな部屋に響いた。


「セ‥ラフ?」


セラフはを抱きしめていた。
今まで何度も彼に抱き締められたり担がれたりしていただが、今の彼は少し違う事に流石の彼女も気付いた。
彼女は恐る恐る彼を見上げる。


「酔ってる?」

「…そうかもしれません。」

「大丈夫?」

…。」

「なに?」

「私が守ります‥。」

「ぇ?」

「貴女を…誰にも渡さない…。」


そう言うと抱き締める腕に力が篭る。
はそれでも身動きせずそっと彼の背に手を回す。


「うん…ありがとう。」


途端に明るい声で彼女自らセラフに抱きつく。
勢いがついた為ややセラフがソファに押されてはいるが。


?」

「でも!オラクルが一番大事だからね!!私が居ない間もしっかり守ってよ?」

「…分かってます。」

「うん!!セラフ‥。」

「はい?」


彼の胸に顔を埋めながら彼女は極上の笑みを浮かべた。


「大好きだよ!」

「ッ……はい。」


彼女の行き成りの言葉に彼はサングラスの下の瞳を大きく見開いた。
そう言った途端の身体から力が抜ける。
慌てて体勢を立て直して彼女を抱きなおすと微かな寝息が聞こえる。


「…あれだけで酔ったんですか…。」


色白の彼女の頬が酒のせいかわずかに桜色に色付いている。
そんなの頬を愛しげに撫ぜながら額にキスをした。


「…作られたモノであっても。酔う…か。」


確かに…自分は酔っていたのかもしれない。
滅多に飲まない酒を飲んで。
作られた心臓の鼓動が大きい。
彼女の言葉一つで…


セラフは彼女をゆっくりと抱え上げベットに寝かせるべく歩き出した。


「んぅ…。」

「おやすみなさい‥。」


はセラフの服をぎゅっと掴みすやすやと寝ている。
それから彼女をベットまで運んだのはいいもののはセラフの服を掴んで離さず。
そのまま彼をベットに引っ張り込んでしまった事は言うまでもない。
実は彼女は酒に滅法弱かったようだ…。
彼女に抱きつかれながらセラフも何故だか安心して…眠ってしまった。

しんと静まり返った部屋にはテーブルの上の酒瓶と割れたままの杯が月明かりに照らされていた。









































後記

まるっきりネオが来た日の夜ってことですね;
初セラフオンリー(笑)微エロ目指しても無理でした。くぅ〜天然は難しいっ。
実は状元紅ってお酒家にあったんで;使ってみました。寝酒として従兄弟が飲んでるようです。
度数は17〜18位だったはずです。まぁ強いといえば強いかなぁ〜
というかセラフがムズイ;;暫く彼とはお別れです〜次回はメロ一派編。




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