MATRIX-6
THE DREAM AND ACTUAL GORGE
【 6 】
がオラクル達の元へ来て2週間程過ぎた。
あれから時間の許す限りトリニティとネオは顔を出し、に様々な物をプレゼントしていた。
トリニティはもっぱら自身が書いてきた洋服や小物など。
ネオは戦いの事などを考えてか、戦闘シュミレーションプログラム等を持ってきた。
彼女はやはり特別なプログラムなのかネオの持ってきたシュミレーションも難なくこなしていた。
最近ではよくセラフに手合わせをしてもらっている。
「ねぇねぇオラクル〜。買い物してきていい?」
「あら?どうしたの?もしかして…。」
「そう。食品がきれてるのがあるんだ〜だから買い物行ってきていい?」
オラクルはニコニコと笑みを浮かべて彼女を見つめる。
彼女は此処に来てから一回も外に一人で出かけていない。
エージェントや最古のプログラムであるメロビンジアン一派も彼女を狙っているからだ。
普段出かける際はネオやトリニティ、セラフが共に行く。
だが、今日はネオ達は来ていない。
セラフは客人が来るので動けない。
「そうね。貴女も十分一人で戦えるものね。」
「でしょでしょ?大丈夫だよ!行っていい?」
「えぇ。あっでも…。」
そこでオラクルは言葉を切る。
と其処にセラフが話しに入ってくる。
密かにオラクルは笑みを浮かべる。知っていたからだ。
「駄目です。買い物なら明日私と行きましょう。」
「えぇ!?だって今日の晩御飯にいるんだもん!」
「だからって危険です。」
「私は子供じゃないよ!」
「自分を子供じゃないと言う時点で子供です。」
セラフの比類なき返しには言葉も無い。
流石は翼の無い天使。
二人のやり取りを見ながらオラクルはニコニコと微笑んでいる。
彼女が来てからセラフは本当に表情豊かになったわ‥。
を本当に心配している…
そこでまだ言い争いを続ける二人に声を掛ける。
「セラフ。近場の市場なら大丈夫よ。幾ら彼女でも迷わないわ。」
「ですが…。」
「それに今日は外出するべきなのよ。」
オラクルの言葉には一つ一つに意味がある。
私自身それは理解している。
だが…私は過保護過ぎるのだろうか…。
「セラフぅ…。」
「っ…。」
彼の上着を掴み下から見上げてくる彼女は完璧に子供だ。
これで19とは犯罪だろう。とセラフは思った。
彼は深い溜息をつくと彼女の頭に掌を置く。
「分りました…。買い物にいってらっしゃい。」
「本とっ!?」
今まで泣き顔だったが急にぱっと笑顔になる。
苦笑しつつも彼女に事細かに道などを説明している。
「全くセラフは心配性ね…。」
「あっオラクル〜鍵借りていい?」
「えぇ。いいわよ。」
「。危なくなったり迷ったりしたらそれですぐに帰ってきなさい。迎えに行ってもいいですよ?」
「セラフはオラクルの護衛でしょうが!大丈夫だって〜。」
彼女は緊張感もなくからからと笑う。
セラフはまた深い溜息を着いたのだった。
ただ彼は気付いているのだろうか。
自分が一番優先しなければいけないオラクルの護衛より一瞬でも彼女を優先してしまった事に。
「じゃあ。いってきま〜す。」
セラフの心配を他所に彼女は颯爽と部屋を出て行った。
「えっと〜これで最後かな…。」
は大きな紙袋を抱えたまま手にしたメモを見ている。
ちなみに今の彼女の服装はなんともシンプルな物だ。
トリニティが持ってきた服はどれもスカート系で彼女の好みではなかった。
履き馴らした黒のGパンに白いシャツに軽く黒のパーカーを着ている。
「にしても…ここら辺来たこと無いや…。」
物珍しそうに辺りをきょろきょろしつつ歩いていく。
最近独りになることなんてなかったなぁ。
何時もオラクルやセラフがいたし。
時間があればトリニティ達が着てくれた。
でも短い間に色々合ったなぁ…。
私が人間じゃなくてプログラムで。
それでもネオ達は態度は変えなかった。
「ちょっと嬉しかったなぁ…ん?」
不意にぽつんと頬に触れた冷たさに顔を上げると空には雨雲が走りぽつぽつと降り始めていた。
「うわっ!傘無いよ〜。」
何処かに駆け込もうにも辺りは市場な為小さな軒下くらいしかない。
そうこうしているうちに雨は酷くなっていく。
「どうしようかなぁ…」
彼女の黒髪が雨に濡れ頬に張り付く。
ふと打ち付ける雨の中で目に留まる人物。
「…?」
雨でぼやける視界に入るのは目が覚めるほどの白。
日の当たる場所では眩しいだろう全身白い人物。その姿はある意味浮世離れしていて異様だ。
体格で男と分るが彼の着ているスーツもコートも肌もドレット状の髪さえも白い。
唯一の色味はその双眸を隠した黒いサングラスと。
左腕から流れる鮮血。
はそっと彼に近づいていく。
彼は雨に濡れる事も気にしていないのかしきりに辺りを見ている。
「あの?」
「…………。」
「すいません!」
「!…なんだ?」
「腕…大丈夫ですか?」
彼は心配げに見上げてくる少女に視線を向けた。
黒髪に大きな瞳の幼い少女…と彼の瞳には写った。
「あぁ…平気だ。」
「あっちょっと待ってくださいね。」
「?」
彼女は自分の荷物からごそごそと取り出す。
そうそれは包帯。
「少しいいですか?」
手で屈むよう指示すると彼の腕に服の上から包帯を巻いていく。
「止血位にしかならないですけど。」
「………あんた変わってるな。」
「はい?」
「俺を見て怖く無いのか?」
「…自覚してんですか。あっいや。見慣れてるというか…。」
「見慣れてる?」
は長身の彼を見上げ笑みを浮かべる。
「私も貴方と同じですから。」
サングラスの下の彼の瞳が細められる。
「…プログラム?」
「そうですね。」
包帯を巻き終わったは荷物を持ち直し彼を見る。
「あんた人間だろ?」
「いいえ〜。最近まで知らなかったんですけどね。私も貴方と同じです。」
彼は心底意外そうな目で彼女を見つめる。
「プログラムに見えない。」
「人間に近いそうです。そういえばその腕の傷は切り傷ですね。」
「あぁ…仕事でな。」
「誰かの護衛さんですか?」
「そうだ。」
「へ〜…。」
「あんたはエグザイルか?」
「…多分。」
彼は滅多に見せない笑みを浮かべる。
それを見ても笑う。
「自分の事だろ?」
「だって今まで普通に生活してたんですよ〜?」
「そうか…。」
「それと私は”あんた”じゃなくてです。」
「…。」
「貴方は?あっ名乗れないんなら別にいいんですけど。」
彼の仕事の事を察してかは言ってから慌てて首を振る。
その仕草を可愛らしいなと思いつつも白い彼は口を開ける。
「マスターからはツインズと呼ばれている。」
「ツインズ?……複数形?というか双子??」
「あぁ。弟がいる。」
「えぇっと固有名詞は?」
「俺達は二人で一人だ。」
「うわ〜…もしかして見た目も…。」
が口を開きかけた時彼の背後から声がかかる。
「兄貴!」
「おっ…早かったな。」
「あぁ。しっかり取り返してきたぜって…誰?」
「俺の怪我の手当て
をしてくれた。だ。」
兄の肩に腕を回しつつやはり見た目に全く同じ弟は彼女を見る。
「へ〜手当てね。俺は弟のツインツーだ。よろしく。」
「ツインツー??」
「俺が兄でツインワン。」
「俺が弟でツインツー。」
「はぁ。どうも。」
見た目に全く同じでも性格は違うのか…。
何となく分るかも。
「あのお二人は…。」
「敬語じゃなくていい。」
「そうそう。俺らも敬語じゃねぇから。」
「あ…うん。二人は全く同じプログラムなの?」
「一応。」
「だろうな。」
「でも性格とか違うみたいだよ?」
「「そうか?」」
「ぶっ。」
同時に顔を見合い声を出した二人には思わず噴出す。
「やっぱり双子だ〜。」
「…そういえばは買い物の途中なのか?」
「あっ忘れてた。帰るところだったんだけど。」
「今更ながら忘れてたな…。」
「どしゃぶりだね。」
「そうだ。さっきいい場所見つけたんだ。も行こうぜ。」
「へ?」
そう言うとツインツーは彼女を軽々と抱え歩き出す。
驚いて手放してしまったの荷物をツインワンが絶妙なタイミングでキャッチすると彼も笑みを浮かべて弟の後を付いて行った。
後記
やっと…やっと出せたぁ!!!ツインズvvv
あぁでもなんだかセラフが超過保護(笑)
私的にツインワンはマジメで冷静。ツインツーは不真面目で楽観主義って感じですvv
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