MATRIX-4






THE DREAM AND ACTUAL GORGE
【 4 】
























…大丈夫かしら。」

「大丈夫さ‥セラフが着いてるんだし。」

「それはそれで問題よね…。」

「ハハ……。」


トリニティの目が怖い…。据わってる。


半ば冷や汗を掻きつつモーフィアスを見やると、彼は椅子に腰掛けゆうゆうとお茶を飲んでいた。
はぁと深い溜息を着くとネオも腰を降ろした。











の手を引き歩くセラフは顔には出さないが彼女について色々と思案していた。
それは昨日の事。オラクルが何時も通りクッキーを作っていると、彼女は唐突にこう言った。


『そういえば、明日お客様が来るわ。』

『……客ですか?』

『そう。大事な大事なお客様よ。』


そう言うとオラクルは笑みを浮かべ彼に一つクッキーを渡した。


『大事な客とは?』

『この世界と彼らを繋げる大切な存在よ。』

『繋げる存在…。』

『そう。彼女は人間も、作られた者達にさえも作用する…。』

『…………。』

『きっと貴方も惹かれるわ。』


それっきり、オラクルは笑みを浮かべたまま奥へと入って行ってしまった。


「あの、セラフさん?」


少女の声にはっとすると此方を見上げる大きな瞳とぶっかった。


「なんですか?」

「この扉は何処へ繋がってるんですか?」

「預言者の元にです。」

「へ〜…。」


物珍しげに辺りをきょろきょろ見渡すの姿を目の端に止めながらセラフはまた考える。


プログラムである自分が人間の様に別の存在に”惹かれる”事はありえない。
何故、オラクルはあのような事を言ったのだろう?


「そういえばセラフさんは東洋人なんですか?」

「えぇ。」


正確にはそうプログラミングされている。


「やっぱり!みんな外人さんだから…同じアジアの人に会えてよかった〜。」

「貴女は…日本人ですか?」


質問した後にはたと気付く。
何故このような質問をしているのだろうと。
話す必要も無いのに。
ただあまりにも彼女が嬉しそうだったから。
相手は人間なのに。


「はい。行き成りネオに抱えられて…連れてこられて。」

「そうですか…。」

「………あの、行き成り変なこと言いますけど。」


は急に立ち止まると先程までの笑顔を消して怯えたような視線を彼に向ける。
手を繋いでいた為必然的に一緒に止まったセラフは彼女を見据える。


「私、人間に見えますか?」

「…?」


何を言い出すのだろう?


「見えますが‥?」

「……そうですか。」


ふと見せた彼女の不安そうな、泣きそうな顔が気になった。


何事か思案する暇もなく目的の扉についた。
セラフはゆっくりと鍵をいれ、回す。


「あれ?」


扉の中へ入った途端は辺りをきょろきょろと見渡し驚いたような顔をする。


「ぇ…此処って??」

「この先です。」

「ぁ、はい。」


扉の先は先程までのチャイナタウンでも白い廊下でもなかった。
古い建物の中のようだった。
セラフに引かれるがまま長い廊下を歩いていく。


「此処です。」


そう言うと、扉を開け彼女を中へ促す。
部屋に入った途端鼻腔を擽る甘い香り。
お邪魔しますと言った後、そっと中へ進むとキッチンに一人の女性の姿が見える。


「待ってたわ。”joining person”?」

「ぇ?」

「丁度クッキーが焼けたところよ。さぁ座って?」

「あ、はい。」


彼女の言葉に手直の椅子に座る。
オラクルも彼女の前に座る。


「クッキーをどうぞ?飴もあるわよ?」

「頂きます。」

「セラフ。あなたも其処に座って頂戴。」

「…はい。」


何故自分もと思いながらも素直に座るセラフ。
クッキーを食べニッコリと笑みを浮かべるの横顔を見ながら何故自分はこんなにも彼女を意識しているのだろうと考える。


「すごくおいしいです!」

「そう。よかったわ。」

「あの…それで私の事について聞きたいのですが…。」

「えぇ。何でも聞いて頂戴?」


は一呼吸すると、オラクルの瞳を見つめ凛とした声で問うた。


「私が、人間ではなくプログラムというのは本当ですか?」

「っ!?」


セラフは小さく息を呑む。
今の今まで人間の少女と思っていたが自身を自分と同じプログラムと言った事実に。
ちらりとセラフの小さな反応を見た後オラクルはの両の手を握り優しく話し始める。


「それは本当よ。貴女の身体はマトリックスの外にはないわ。」

「……そうですか。」

「貴女は作られた。でも普通のプログラムではないのよ?機械が作ったんじゃないもの。」

「??」

「貴女のご両親が貴女を作った。愛情を込めて大切に大切に…自分達が死んでも生きていけるように。」

「っ…。」


オラクルの言葉にの頬に一滴の涙が流れる。


「ほら?でも貴女は人間と同じよ?感情・涙・愛。それは人間だけの物ではないの。それを知り、解した時作られた存在も”真実”になる。」


の頬に流れる涙を優しく拭う。


「あなたは今自分の存在価値が分らないでいる。」

「はい…。」

「私にはきっかけを与える事しか出来ないわ。」

「きっかけ?」

「そう。貴女は人間達と機械を繋ぐ者よ。人間でもあり、機械…プログラムでもあるの。」

「ぁ……。」

「ね?貴女は貴重なプログラムだから狙われてしまう。だから、暫く此処に居て考えなさい。自分の今後を。」

「はい…。あっでもネオ達が…。」

「彼らにも私からの言葉を伝えるわ。セラフ。このディスクを彼らに。」

「分りました。」


何時の間にやらオラクルの手の中にある一枚のディスクをセラフに渡す。
は瞳の涙を拭いながらオラクルを見る。


「あの、あいさつに行ってもいいですか?」

「えぇいいわよ。まぁ彼らのことだから…。」

「?」

「フフフ…なんでもないわ。そうだったわ!自己紹介していないわね。」

「えっと…です。」

「えぇ。私はオラクル…そしてこっちが」

「セラフさん。ですよね?」

「…はい。」

「それじゃあ行ってきなさい。」

「はい!行ってきますオラクル。セラフさん行きましょう!」

「!…はい。」


は勢い良く立ち上がると、セラフの手を掴み歩き出す。
セラフは多少動揺しつつも彼女について部屋を出て行く。


「フフ…もう他のプログラムに干渉してるのね。」


オラクルは密かに笑みを浮かべた。










さん。」

「なんですか?」


来た時と同じように手を繋いで歩く二人。
セラフはふいにに声を掛ける。


「私のことはセラフと呼んでください。」

「ぁ…そう‥だね。うん!これからよろしくねセラフ!じゃあ私のこともでいいよ?」

「えぇ。」


そういうと彼は微笑んだ。
それを見ても嬉しそうに笑うとセラフの大きな掌をキュッと握った。





























後記

ザイオンサイドからオラクルサイドへ〜(笑)
何と主人公さんには他の人やプログラムさえも微笑ませる事が可能なのです!!
まぁ逆ハーですから;;でもセラフさん好きッスvv難しいけど;;




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