MATRIX-19
THE DREAM AND ACTUAL GORGE
【 19 】
「スミスさん。何処に行くんですか?」
「着けば分かる。さぁ…。」
はスミスに手を引かれながら真っ白な道を進んでいく。
辺りを見渡すも、回り一面が白で埋め尽くされている。
彼女は少々不安げにスミスを見上げ諦めたかのように只歩いて行く。
「さぁ着いた…。」
「此処は…。」
白い廊下にポツリと現れた黒い扉を開け中に入る。
其処は混沌とした場所だった。
は驚きで瞳を大きく見開く。
「なんですか…これは?」
「此処は本来あるべき場所だ。」
「あるべき?」
暗闇と赤。
暗沌とした空気が広がるその場所はまさしく混沌。
「君は何故人間であるアンダーソン君を助ける?」
「私は…元々人間としての意識が強いからです。それに…」
「それに?」
「私にとってネオや皆は大切だから。」
「私はアンダーソン君によって一度デリートされた。だが私はプラグを抜かれた新たな"人間"として蘇った。これでやっと私は自由になったと思った。だが違うのだ。」
はスミスを見上げる。静寂の中スミスの強い声が響く。
「MATRIXに自由等存在しない。我々はこの小さな箱庭に囚われたままなのだ。」
「でもそれは…人間も同じです。」
「だが、彼等は目覚めれば自由を手に入れることが出来る。だが我々は如何だ?」
「それは…。」
「我々の存在理由等皆無。只機械に操られ働くばかり。コレに何の意味がある。」
「存在理由は無いなんて…そんなことありません!」
「ッ…。」
の一際大きな言葉にビクリとスミスは彼女を見た。
彼女の瞳には何時の間にか涙が滲みキッと彼を見上げ睨んでいる。
きゅっとキツク拳を握りその細い身体は小さく震えている。
「人は目的や守りたいものを見つけた時に存在理由を感じます。それだけじゃないここに存在しているそれだけでも"理由"にはなります!」
「……………。」
「私は人間じゃないけど…でもセラフやネオ達を守りたい。一緒に居たい。スミスさんだって"自由を求めてる"それが存在理由じゃなくてなんだって言うんですか!!」
は涙を片手で乱暴に拭くとすっとスミスから離れ今や扉も無くなってしまった混沌へ歩き出す。
暫く歩きぴたっと止まるとスミスを振り返る。
「私はスミスさんも好きです。それだけは変わらないから…。存在理由が無いなんて言わないで下さい。」
「…」
ふにゃっと気が抜けたような笑みを浮かべ前を見据える。
彼女が混沌に手を向けるとすぅっと光が一筋通る。
スミスは濃いサングラスの下で瞳を大きく見開いた。
「光は自分で作れる。どんなに深い闇も混沌さえも切り抜けることが出来る。きっとスミスさんにも出来ますよ。」
大きくなった光に包まれるかのように彼女の姿が掻き消える。
スミスは言葉も無く彼女が消えた方を見据え深く深く溜息を着いた。
「……私には光等無い。私は影なのだ。」
自分に無い強い光を持つ彼女を求めるのは必然なのだ。
彼女さえ居れば…後は何もイラナイ。
後記
ちょっとシリアス気味ですかね;;
此処で対比したいのが光と闇ですね。前向きで柔らかな彼女を求めるのは必然なのだ。
って感じでしょうか。スミスさんも自分が何で彼女に執着するのかいまいち理解してないみたいですが。
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