MATRIX-20
THE DREAM AND ACTUAL GORGE
【 20 】
「…なんであんなこと言ったんだろう。」
存在理由が無いなんてそんな人この世に一人もいないのに。
どうしてあんな悲しい事言うんだろう。
一人で白い廊下を歩きながらまたポロリとその白い頬を涙が伝った。
そんな思いを打ち消すかのように強く涙を拭いぱっと前を向いた。
「さぁ早く帰ろう!」
「行くわよ。」
「あぁ。」
ナイオビとゴーストは発電所に来ていた。
彼等の任務は各自が爆薬を持ち別々に施設を破壊することだ。最も危険で死に近い。
「……大丈夫さ。」
「ぇ?」
「いや…。」
「それじゃあまた、ね。」
「あぁ。」
ゴーストは脳裏にの笑みを浮かべ一瞬ふっと微笑むと頭を切り替え駆け出した。
「うまくいくかしら。」
「大丈夫。皆を信じるんだ。」
「えぇ…。は無事に帰ったのかしら。」
「あぁ。きっとまた会える。それじゃあ行くよ。」
「気をつけて…。」
ネオは軽く口付けをしそっとトリニティから離れた。
彼が出て行った扉を暫し見つめ目の前の黒電話に視線を移す。
程無くして静かな部屋に電話の呼び鈴の音が響いた。
その頃預言者の家ではセラフは不安げに扉を見たり窓の外を見たりしていた。
何時にもまして落ち着きのないセラフに預言者はティーカップを下ろし苦笑した。
「そんなに焦ってもはまだ帰ってこないわよ?」
「いえ…。なんだか嫌な予感がするんです。」
「予感…ね。」
セラフの感情表現や情緒等が顕著に出てきているわ。
彼女が現れる前とは想像もつかないほどに人間に近くなってきている。
やはりは他のプログラムに大きく影響を与えるようね。
オラクルは溜息を着き時計を見た。
時計は午後10時を示している。
と、その時セラフが玄関の方へ駆けて行った。
「あらあら。」
ガチャリ。
「ただいま〜。」
「!」
「わぁ!?ちょっセラフ;;」
扉を開け入ってきたをセラフはぎゅっと強く抱き締めた。
彼の胸に顔を埋めながらも頬を染めつつ何とか離れようともがくもののそのままひょいと荷物を持つように抱えられ部屋の中へと入って行く。
「おっオラクルッ////」
「フフフ…お帰りなさい。」
「セラフ如何したの?」
「心配したんですよ。何かあったのかと…。」
「ぁ……。」
「?」
は先程のスミスとのやり取りを思いだし表情を曇らせる。
セラフに下に降ろされながらオラクルに視線を向ける。
オラクルは優しく微笑みながら彼女に近づき頭を優しく撫でてあげる。
「オラクルぅ……。」
「頑張ったわね。」
「ッ!」
彼女は緊張が途切れたのかオラクルに抱きつきポロポロと涙を零し始めた。
オラクルは彼女の背を撫でながら穏かに問いかけた。
セラフはが行き成り泣き出したことに驚いたのか彼女を心配そうに見つめている。
「彼はネオの影のような存在なの。全てからの開放を願っている。彼を救えるのは貴女だけよ。」
「私だけ…?」
「そう。貴女にならきっと出来るわ。彼を影から救える…。」
「うん…。」
「さぁ。座りなさい。温かい紅茶を入れてくるわ。お腹はすいていない?」
「ありがとう。お腹…少しすいたかな。」
「ふふ‥。ケーキを切ってきてあげるわね。」
「うん。」
はオラクルから離れソファに座り一呼吸した。
セラフは彼女の隣に腰掛心配そうに問う。
「何があったんですか?」
「ちょっとスミスさんと話したんだよ。」
「スミスと!?」
「うん…あっネオ達はキーメイカーとブラックタワーって言う所に行くみたい。それとゴースト達は発電所に。」
「そう…ですか。何もされてませんよね?」
「大丈夫。何ともないよ…ただ。」
「ただ?」
「皆が無事に帰ってくればいいなぁ…。」
の言葉にセラフは安心させるかのように彼女の肩を抱き寄せた。
「大丈夫ですよ。必ず…彼等は帰ってくる…。」
「うん。」
「セラフ…起きてる?」
「?如何したんですか?」
それから休むようにと部屋に向かったは何故かセラフの部屋に来ていた。
枕を抱えパジャマ姿の彼女を見、上着を脱いだ状態のセラフは首を傾げた。
「あの…一緒に寝てもいい?」
「……入りなさい。」
「ありがと…。」
部屋に入ったはセラフのベットに腰掛彼が来るのを待っている。
セラフはベットサイドに掛けていたサングラスを置くとベットに腰掛けるを見る。
「寝ないんですか?」
「ぁうん。」
暫し滅多に見れないセラフの素顔に見惚れつつ促されるままにベットの中に潜り込む。
柔らかな布団に埋もれながら何故か高鳴る心臓を胸にふっと過去に似たようなことがあったことを思いだす。
「(そういえば前も…一度セラフと一緒に寝た事あったなぁ…。)」
「消しますよ。」
「あっうん。」
電気を消して暫くするとセラフが布団に入ってくる。
何時もは無い隣に人がいる気配。
はそれが何処か安心できるようで入ってきた彼に身を寄せた。
セラフは一瞬ピクリと身体を反応させたものの彼女の方を向く。
「如何したんですか?」
はセラフの上着を掴み更に身を寄せながら彼の胸に額を付けた。
セラフは戸惑いつつも彼女の肩を抱く。
「少し恐くて…。」
「恐い?」
「うん…。おやすみなさい。セラフ。」
「………おやすみなさい…。」
セラフに抱き締められるようにしながら彼女は静かに瞳を閉じた。
それから幾らか時間が経ったのか彼女は夢の中に居た。
彼女に問いかける声が聞こえる。
はその声のするほうに視線を向けた。
『トリニティ?何でッ‥なんでトリニティが…此処に居るの?』
トリニティはネオに支えられながら高いビルの縁に倒れていた。
ネオがしきりにトリニティに声を掛けている。
彼女は自身の声が震えているのにも気付かずどんどん血の気が失せて行くトリニティを凝視していた。
『嘘…まさかそんなッ!!!』
トリニティの腹部からは血が流れている。
傷跡から銃撃を受けた事は確かだった。
は口元を押さえ零れて来る涙を止めることなく瞳を見開いた。
『トリニティ!!駄目だよッ‥死んじゃ駄目だよ!!!』
「ッ……?」
「ぇ?なんだトリニティ?如何したんだ?」
「無事…だったのね?」
『トリニティ!!!』
彼女はトリニティに駆け寄りネオが抑えている傷口にそっと手を触れた。
どうやらネオにはの姿が見えていないようだ。
トリニティの言葉に辺りを見渡している。
「ネオ‥が居るわ。」
「なんだって?」
「此処に…居るのよ。」
『トリニティ。駄目死んじゃ!!!』
「ッ約束守れないかもしれないわ…。ごめんね。」
「トリニティ!!」
力を失っていくトリニティの身体を支えながらその時ネオは確かにの存在を感じた。
『ネオ!ネオならトリニティを救える。だから…助けて。トリニティを助けて!!!』
「?……あぁ。死なせはしないッ!!」
ネオの手がトリニティの身体に入っていく。
彼女の止まり掛けた心臓を優しく包みゆっくりと握った。
トクン…。
トクン…。トクン…。
「ッはぁ!!」
「トリニティ!!」
「ネオッ!!」
お互いを強く抱き締め合いトリニティは大きく息を吸う。
辺りを見渡し見知った彼女の姿を探すが其処には既にの姿は無かった。
『トリニティ大丈夫だよね…。うん。ネオが着いてるんだもん。大丈夫だよ…。』
はまた深い夢の中を彷徨っていた。
そこにまた新たな声が響く。
『あれは…船?』
ネオ達の話に良く聞く現実世界の乗り物。
それは話のものと良く似ていた。
彼女の視線はその船の周りを飛び交う物達へ向けられる。
『なにあれ?』
タコのようなイカの様な形容し難い形の生物。
いや、生物ではない其れは機械達の兵隊であるセンチネルだった。
船体に張り付きバーナーのような物で破損させているようだ。
『あれは機械?…じゃあこの船は襲われてる!?』
船内に視線を向けるとは瞳を見開いた。
船に乗っているのは見知っている人達だったのだ。
『ナイオビさん!ゴースト!!そんな。此処は現実世界?どっどうしようこのままじゃ…。』
船内ではナイオビの檄が飛び緊迫した空気が走っていた。
「クッ。あと少し…もう少し奥に行けば…」
「EMPを使うのか?」
「それ以外この数を如何にか出来るとは思えないわ。」
「そうだな…。」
「ゴースト前ッ!!」
「ッ!?」
後方のセンチネルを迎撃していたゴーストにナイオビの声が響く。
取りこぼしたセンチネルがコックピットに2体張り付いていたのだ。
前方がセンチネルの制で見え難い為船体が大きく揺れる。
その時。センチネル達が機能を停止しボロボロと船体から剥がれた。
それに驚いたゴーストはナイオビに問いかけた。
「EMPを使ったのか!?」
「使ってたらとっくにこの船も止まってるわよ!!」
「?」
「ぇ?」
ゴーストはコックピットの外を凝視している。
そこにはありえない存在の姿。
青い光に包まれた彼女は安心したかのように柔らかく二人に微笑むとすぅっと消えた。
ナイオビも言葉を失っていたが思い出したかのように船を動かし始めた。
「まだまだ来るわよ!」
「今のは…幻か?」
「違うわ。私にも見えた。」
「何故彼女が…彼女が助けてくれたのか?」
「今はそれ所じゃないわよ!!生きて、生きて帰って確かめればいいじゃない!」
「……そうだな。俺達はまだ生きている!」
「ん……ッ…今の…夢?」
はセラフにしがみ付いたまま薄く瞳を開ける。
再度セラフの服を強く掴み呟いた。
「どうか。みんな無事でいて…。」
NEXT MISSION...FOR MATRIX RECOLUTIONS→
Thank you for reading ! !
後記
ようやくリローデット編終了です!!!
最後は少し読みずらかったでしょうか;;主人公以外の人々もやはり出したくて。
夢の中で無意識にトリニティやゴースト達の元へ行ったのは彼女の能力でしょう。
それでは此処まで読んで下さりありがとうございました。
次回作もどうぞ宜しくお願い致します。
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