破天荒なりし無垢なる女神

破天荒なりし無垢なる女神


Act.2 目覚めれば青天の霹靂






























「ふ…っ…。」


冷たい。
何だろう。
ひんやりした物がほっぺとか額に当たってる…?
キリヲ?グンジ…??それとも…


は微かに身動ぎしてうっすらと瞳を開けた。
暈ける視界には目の前に誰かが居る様子が映る。


「んん…?……」

「目が覚めましたか?」

「ふ…ぇ?」


低く甘いテノールには呆けたまま小首を傾げる。
彼女の知っているキリヲでもグンジでもアルビトロの声でも無い。
訝しげに彼女はゆっくりと起き上がろうとするが、見知らぬ声の主はそれをやんわりと押し留める。


「少し待っていて下さいね。」


優しく彼女に声をかけ部屋を出て行く。
は軽く頭を振り意識をはっきりと覚醒させた。


「ぇ……?此処……??」


は周囲を見渡し驚いたようだった。
其処は彼女の良く知るトシマの自分の部屋でもなくましてやMATRIX内の自分の部屋でもない。
最低限の物しか置かれていないモノトーンの部屋。
恐らく先程の男性の部屋なのだろう。
彼女が寝ているのはその部屋の中で一番大きなキングサイズのベットだった。
は理解出来ないとばかりに自身の身体を見る。
ベットサイドのシェルフには彼女の着ていたロングコートと二本の愛刀が置かれていた。


「一体…?」

「おや。起き上がっても大丈夫ですか?」

「あっ………。」


部屋に先程の男性‥赤屍が入ってきた。
彼の服装は普段よりもかなりラフだった。
首元が緩められた白いYシャツに黒のスラックス。
彼の特徴の帽子も無いため彼の顔が露になっている。
赤屍は苦笑するとベットサイドに座り彼女にコップを差し出した。


「どうぞ。」

「あっありがとうございます…。」


ひとまず差し出された水を飲む事にした。
思いのほか喉が渇いていたのかは一息で其れを飲み干す。
赤屍はその間始終彼女を瞳を細めて見つめていた。


「…ん…ありがとうございます。」


飲み干したコップを返しながらは丁寧にもう一度礼を言う。


「あの…ここは‥一体…?私はどうしてここに?」

「そうですねぇ…。」


赤屍は先日の事を掻い摘んで説明した。
さちは驚いた様子で彼の話を聞いている。


「おっ落ちてきたんですか…。」

「えぇ。ですが…幾分落ち方がゆっくりだった気がします。それと…貴方を青い光が包んでいるようでしたが。」

「青い光…まさか…。あっ…お名前伺ってもよろしいですか?」


の問いに赤屍はにっこりと微笑んだ。


「赤屍蔵人と申します。」

「あっ私はといいます。えっと…赤屍さん今どこか怪我とかされてますか?」

「怪我…ですか…?」


はぱっと赤屍の身体を見るが手の甲に見える傷跡意外コレといって外傷は無いようだ。
彼女は少し困ったように眉根を寄せる。


「一番解りやすいかと思ったんですが…。」

「傷があればよろしいので?」

「えっ?あっはい。」


きょとんとした彼女に微笑を投げかけ、彼の手の中に突然鋭利なメスが出現した。
そして自身の腕を一閃する。


「はい。どうぞ。」


差し出された彼の蝋のように白い腕には相反した赤い血の線が出来ていた。
は慌てて両手を傷口に翳す。


「これは……。」


常人よりも数段傷の回復が早い赤屍も珍しく目を見張る。
彼女の掌から淡い青い光が溢れ傷をどんどん治していく。


「えっと…この光でしたか?」

「えぇ。確かに今の光です。それにしても変わった力をお持ちで。」

「うーん…それじゃあ無意識に出てのかもしれないです。」

「自己防衛本能でしょうね。…それにしても実に興味深い…。そういえばさんは此方に来る前何処に居たか覚えていますか?」

「あっトシマに居ました…。」

「豊島ですか…?」

「此処は…?」

「貴方が落下してきたのは裏新宿です。此処は私の家ですがね。」

「新宿?!(と言う事は此処は…日本…?マトリックス内??)」


難しい顔で俯いた彼女に赤屍は小首を傾げる。
赤屍は困惑気味の彼女の肩をやんわりと掴み柔らかな笑みを見せた。


さん。お話して下さいませんか?貴方の事を。」

「でも…。」

「これもなにかの縁。私に出来ることであればお力になります。」

「赤屍さん…。」


は彼の言葉に嬉しそうに微笑む。
さながら花が綻ぶような愛らしい笑みに赤屍は瞳を細める。

それから彼女は自分自身の事MATRIXの事。どうしてトシマに行ったか等詳しく赤屍に説明した。
話終わった彼女は不安げに彼を見上げる。


「…(やっぱり無理すぎるよね…プログラムとかMATRIXの事とか…)」

さん。並行世界というのをご存知ですか?」

「並行世界…ですか?」

「えぇ。一種のパラレルワールドの事で私達が居る此処と並んで全く同じ‥けれど少しだけ違う世界があるという定説です。」

「そんなのがあるんですか。」

「科学的な根拠もありませんが良く言う神隠しや集団消滅等が間違って違う世界に行ってしまったのではないかと言われています。」

「そうかもしれません。…私の居たMATRIXは機械いわゆるコンピューターソースのようなものですから。」


彼女は赤屍の話に頷く。
が考えた事は簡単だった元々機械…電子の存在のプログラムであるとセラフが鍵を通して
トシマの世界に行った。それからまた何らかの作用で赤屍のいる世界に訪れた、と。


「でも…疑問があるんです。私はプログラムのはずなのにどうして生身の身体があるんでしょうか?」

「それは分かりませんが…この世界やトシマとやらに適応した結果ではないのでしょうか?」

「そう…かもしれませんね…。」


は少し俯きまたすぐに顔を上げ彼女を見ていた赤屍を見つめる。


「赤屍さん信じてくださるんですか?」


未だに不安げな彼女に赤屍は彼独特の笑みを浮かべた。


「クス。えぇ。信じますよ。貴方は嘘を言っている様には思えませんし。」

「あっありがとうございます。」


は先程のように嬉しそうに微笑んだ。
赤屍は彼女の頭を優しくなでコップを持って立ち上がった。


「お腹が空いたでしょう。今何か作りますね。」

「えっあのそんな悪いです!」

「さぁ。まだ休んでいなさい。なにも心配いりませんからね。」

「あっ‥……。」


彼女の言葉を長し赤屍は部屋を出て行く。
は困ったようにシーツを握った。


「…こんなに良くしてもらって悪いな…でも此処はトシマと違って普通みたい。」


そっとベットを抜け出し大きな窓へ近づく。
閉められたカーテンを開けると眩しい光が瞳に刺さる。
は瞳を細め窓の外を覗きこんだ。


「わぁ‥。」


外下に見えるのは高層ビルに無数の建物。
彼女は元々地方に住んでいた為東京に来ること自体あまりなかった。


「修学旅行以来だ…にしても高いなぁ。」


かなりの高さから見下ろしていることから考えて。
この赤屍の自宅のマンションがかなり高いのだと伺える。


「赤屍さんってお医者さんかな?」

























後記

なにやらかなり友好的な赤屍さん…。
他のキャラどうやってだそうかな。




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