破天荒なりし無垢なる女神

破天荒なりし無垢なる女神


Act.1 無垢なる者が出逢う狂気なるDr






























「はぁ…。」

「どーしたんだァ?」

「あ…いぇ。」

「腹でも減ったか?」

「違います〜。………こんなに探してもセラフが見つからない…彼は無事なんでしょうか?」

「どうだろうな…」


の隣に座ったキリヲは暫し考えたのちに頭を横に振った。


「もう死んでたりしてぇ〜〜。」

「ッ…。」

「馬鹿が。」


カラカラと笑いながら話すグンジにキリヲは彼の頭を思いっきりどついた。
は再度大きく溜息をつくと小さな声でおやすみなさいと言って部屋へ戻って行った。


「ぇ〜〜ぃ?」

「このクソガキがッ!!」


その後リビングからは激しい攻防の音が響いてきた。




















は自身の部屋にあるベランダを開き眠るでもなくぼぅっと空を眺めていた。
闇色の空には赤く細い死神の鎌の様な月が上っている。


「セラフ……。」


は膝を抱えて座り込み頭も下げてしまう。
空気が冷えているせいか彼女の吐く息も白い。
僅かに顔を上げたの白い頬を涙が伝った。


「何処に居るの…?」













ぃ〜?昨日はごめんな?お〜い?」


不躾にドアを開き中に入ってきたグンジは小首を傾げる。


「あれ?…………?」


開け放たれたベランダと外から入る冷たい外気で白いカーテンが静かに揺れていた。












「……全く…今回もハズレでしたねぇ。もう少し楽しめるかと思いましたが。」


最強最悪の運び屋ことDr.ジャッカル。赤屍は微かに白眉を寄せ溜息をついた。
彼の足元には数分前まで人だった肉塊が転がっている。
頬に付いた血を白いハンカチで拭いながら彼は今回の目的であるディスクを懐に仕舞い歩き出す。
時間は午前を示し濃い闇夜に細く白い月が鈍く光る。
赤屍は狭い路地を歩きながら微かに帽子を上げる。


「おや…?」


小首を傾げ視線を上に向ける。
薄い月光になにやら黒い影が広がる。
赤屍の視線は確かに落下してくるそれを捉えた。
どこかスローモーションの様に淡い光に包まれた一人の少女が落ちてくる。
彼は瞳を見開いた。

月光が彼女の黒い髪を輝かせ、蒼い光は乱反射する。
赤屍は一時魅入られたかのように見つめ足早に少女が落下するであろう場所へ向かった。

ふわりと。
彼の腕の中に落ちてきた彼女はまるで羽のように軽かった。
膝を抱え込み僅かに見える横顔は白く涙の後が残っている。
彼は片手で軽々と彼女を抱えもう片方の手でそっと頬に触れた。
冷えているが暖かさがある少女にほっと一息つく。


「それにしても…何処から…?それとも…。」


赤屍は彼女を抱えたまま空を見上げた。


「クス。」


彼は薄い唇を笑みの形にしてゆっくりと路地を歩き去った。

























後記

ぱらぱらと短編を書いていたのですが…今回連載にしてみました。
連載とは言え一話完結ぽくしたいなぁと…。v
初っ端から赤屍さんと遭遇。しかも主人公さん持ってかれました(笑)




※この作品が気に入って頂けましたら拍手・コメントお願いします↓※