間章






   ■ 間章壱・南空ナオミとB ■


























私は大学入試について話すLとワタリさん達を見ながら考えていた。
まだ…まだ時間はある。彼女を助ける時間が。


「……」


映画ではなく漫画の通りに進んでいるのなら可笑しい…
ポテトップスを使ったトリックをする…つまり監視する前に南空さんは死んでいるはず。
でもまだ彼女は死んでいない。もしかして私と言う存在が入るせいで映画と漫画のストーリーが混ざっている?
それならまだ南空さんを助けて此方に来てもらうことも可能なはず。


「ね。L…南空さんってBB連続殺人事件を解決した人だよね?」

「えぇ。そうです。…それも知ってたんですか?」

「うん。小説になってたから映画を流してる途中に読んだの。」

「それじゃあ私が竜崎を名乗る理由も知っていますね。」

「…うん。まだBさんは死んでない?」

「えぇ投獄されている者の死亡リストには載っていませんでした。」

「そっか…。」

「まさか…彼を助けたいなんて思って居ませんよね?」

「えっあっ…。1月21日彼は心臓麻痺で死亡って書いてあったから……でも顔が分かるのかな?」

「アメリカの刑務所リストには載って入るでしょう。」

「それじゃあ月さんはそこまで調べてるって事だよね。」

「今からでも記載写真を変える事は出来ますが。」

「ッ!!本当に!?まだ間に合うかもしれない!だから…。」

「………。」

「小説を読んでてすごく…すごく切なくなったの。Bさん…だから…お願いL。」

「分かりました。間に合うか分かりませんが手を尽くしましょう。」

「ありがとう。」


Lはワタリに視線を送る。近くで話しを聞いていたワタリは瞳を細めて頷くとパソコンへ向かった。
アメリカの刑務所、警察長官への連絡の為に。


「L…私ちょっと出かけて…。」

「駄目です。」

「ぅ…。」

「南空ナオミに会いに行こうとでも言うんですか。」

「……月さんが会うより先に会えばいいんだよ!」

「リスクが大きすぎます。」

「L!!」

「ッ!」


一際大きく響いたの声に他の捜査メンバーもLですら瞳を見開いて固まった。
は立ち上がりLを見つめる。その意志の篭った彼女の視線にLは言葉がでなかった。


「欲張りでも、無茶でも私は…私は助けたいの!」

…。」

「今ならまだ彼女を助けられる。だから…私は行く!」

「ッ!!」


Lの静止を振り切りは部屋を飛び出した。
彼女の後を追いかけようとするLを他の捜査人達が止める。


「おっおぃ竜崎!!」

「ちょっ駄目ですよ!」

「離して下さい。がっ!!」

「落ち着け!ワタリに頼んだらいいだろう!」

「ッ……ワタリ…を追ってくれ。」

「はい。」


ワタリが部屋を出て行くとLはイライラと部屋の中を歩き回り始めた。
がりがりと爪を噛みながら窓に向かい外を睨む。
そんな彼の行動に捜査人は触らぬ神に祟り無しとでも言いたげに各々の仕事に戻った。



















「って…飛び出したのはいいけど…私…南空さんの居場所知らないんだ…。」


今日は12月31日。創造だけど今南空さんはキラについて調べているはず。
それなら1月1日当日。はっきり居場所が分かってる時に行くべきじゃないのかな。
時間が分かってるんだから月さんに会う可能性は低いし。


「…馬鹿だ。」


啖呵を切って飛び出したものの考えは浅はかで。
ホテルへ戻る道すら分からない。


「………馬鹿だ本当。」


何が助けたい。だ。
自分はなんて器の狭い人間だろうか。
ただ勝手に感情移入して…Lだって南空さんを助けたいと思ってるのに。
きっとLは傷ついた…。

上着も着ないで飛び出したせいか寒い。


さん。」

「!……ワタリさん。」


フワリと肩に掛けられたのはチェックのブランケット。
通りの近くに止められたのは見慣れた黒のベンツ。


「ごめんなさい‥。」

「いえ。とにかく車に行きましょう。」


車に乗ると安堵感と申し訳なさで涙が溢れてきた。


「ごめんなさい。私…本当に何も分かって無くて。」

さん。泣かないで下さい。」

「Lだって助けたいって思ってること知ってるのに。私。」

さんは竜崎の心の声を代弁してくださったんですね。」

「え…。」


穏やかなワタリさんの言葉に私は彼を見る。
今はマジックミラーの仕切りが無い為普通に彼の姿が見える。


「竜崎は自分より犯人検挙を一番として、自分の感情を押さえてLとして生きてきました。」

「……。」

「それでも貴女の事を話す時の彼は本当に生き生きとしていました。」

「私。」

「貴女がこうして竜崎の傍に居て下さるからこそ今彼は表に自身の感情を露に始めている。」


そっと私の頭を撫でてくれる掌がとても温かく感じた。


「ビヨンド・バースディ…Bの事もそうです。…だからこそ竜崎には貴女が必要なのです。」

「はい…。」

「それでは一旦ホテルに戻ります。先程から5分置きに連絡が来ていましてね。」

「え!?」

「早く帰らないと拗ねてしまいますからね。」


笑いながら車を動かし始めたワタリさんを見つめ。
私も涙を拭った。帰ったらLにあやまろう。
それで今度はちゃんと南空さんを助けるって伝えないと。


















!!」

「わっ!えっL…。」


部屋に戻るとLが勢い良く飛び出してきて私を抱き締めてきた。
驚いているうちに彼はさっさと私を抱え上げて自分の部屋に向かう。


「…………。」

「あっあの…。」


ベットに座ったLの上に座らされながら思わず口篭ってしまった。
Lはもしかしなくてもかなり怒っている‥?


「L…ごめ…。」

「すいません。」

「え…。」

の言葉も聴かないで自分の意見ばかり…本当にすいません。」


彼の顔を良く見ると眉根を下げてすごく悲しそうな顔をしていた。


「L…?」

「だから…私を嫌いにならないで下さい。」


とうとう彼の大きな瞳から涙が零れ始めた。
私は焦る心と胸を付く切なさに眉根を寄せる。
そっとLの頬を包むと彼の瞳が此方を見た。縋る様な儚い瞳。


「私がLを嫌いになる事なんて絶対にないよ?」

…。」

「私こそ。Lは本当は一人でも多く…ましてや事件で一緒に捜査した人を助けたいって思ってるの知ってて…あんな事言っちゃって。」


彼の額に自分の額を当てて今思っている事すべてを伝える。
上手く伝わるか分からないけれど。


「だから私もあやまりたい。ごめんなさい。貴方を不安にさせてごめんなさい。」

ッ!」


Lは私をぎゅっと抱き締めてくれた。
恥ずかしかったけれど私もそっと腕を回した。





















次の日。

Lとの段取り通り私は南空さんとの接触に成功。
彼と彼女を引き合わせた。


(その時の南空さんのリアクションが凄く面白かった。)


私の話しをしても彼女は私を責めるでもなく、一緒に戦おうと言ってくれた。
そして、捜査メンバーに一人強力な仲間が増えました。

南空ナオミという元FBI捜査官が。


















後記

小説を読んでどうしても彼女だけでも助けたい、そう思いました。
つまり月さんは南空さんの事を知らないってことですね。
余談ですがBも殺されてません。








※この作品が気に入って頂けましたら拍手・コメントお願いします↓※