DEATH NOTE
Five Story
「……少し自室に戻ります。」
捜査本部になっているホテルの一室。
Lは近くに居た夜神総一郎に声を掛けて捜査本部から自室へと戻って行った。
「………。」
カードキーで開けた部屋に入りそのままベットの上に着ていたよれよれのTシャツを脱ぎ捨てる。
部屋に備えられているバスルームへ向かい残りの衣服を脱いで浴室に入った。
シャワーの熱い湯を身体に浴びてふと溜息を付く。
普段は極度に曲がった猫背を少し伸ばして頭から湯を浴びる。
「………。」
ポツリと漏れたのは愛しい女性の名前。
彼女が姿を表さなくなって5年の年月が過ぎていた。
あれから独立したLは世界中の情報をかき集め彼女を探したがやはりどこにも彼女の情報は無かった。
一頻り湯を浴びるとコックを捻りそのまま外に出た。
大きなバスタオルを頭に被ったままGパンだけ穿いて寝室に戻る。
ベットの上で相変わらずの座り方でぼんやりと考える。
「…………。」
返ってくる事の無い答え。
それでも彼女の名前を呼ぶLの姿はまるで親に置いて行かれた小さな子供のようだった。
「‥‥……。」
「そんなに呼ばなくても此処に居るよ。」
「!?」
素肌の肩に触れた温もりと忘れもしない女性の声。
Lは勢い良く振り返る。
ベットに座った彼の後ろに懐かしそうに瞳を細めるが静かに座っていた。
「?」
「うん?」
「本当に…なんですね?」
5年前と変わらない雰囲気。
柔らかな笑みに小柄な身体。
(彼女にして見れば5日しか経っていないので当たり前か)
Lは勢い良く彼女を抱き締めた。
長い腕が身体に回されては一瞬面食らう。
「ひゃっ!」
「っ!……ッ!!」
ぎゅうぎゅう締め付けてくる彼には困った様に眉を寄せて笑う。
嗚呼。彼は私を覚えていてくれたんだ…。
「L…覚えててくれたんだね。」
「忘れるわけありませんッ‥探しました。貴女の事…世界中を探しました。」
「ごめんね。急に来れなくなって。」
「いいんです。また…こうして貴女に逢えた…。」
「L…私…もう戻れないんだ。」
「え…?」
Lは涙で濡れた黒い瞳をに向ける。
幼い頃抱き締めてくれた彼女の身体は今ではLの胸の中にすっぽり納まってしまう。
向き合ったままLは彼女を見つめた。
はどこか寂しそうに瞳を伏せる。
「…私はもう元の世界に…戻らない。貴方を助けに来たの。」
「私を…?それは前にも言ってましたね。」
の細い指がLの瞳に触れ零れそうな涙を掬った。
Lは彼女の手を引き腕の中に収めながら幾分冷静になった頭で考える。
「良く聞いて…私の世界にデスノートっていう漫画があったの。」
はそれからデスノートの事。
キラ事件の事や死神の事全てを隠さずLに話した。
彼は思案顔で瞳を伏せ再度彼女を見る。
「……信じてもらえないかもしれないけど。」
「私はを信じます。」
は彼の言葉に驚いた。
自分の目で確かめなければ信用しないであろう彼の言葉に。
「L……本当に?」
「本当です。」
「マジで?」
「マジです。」
は瞳を見開き彼を見つめ彼もまた彼女を見つめる。
彼女は気が抜けたのかへにゃりと力を抜いて笑みを浮かべた。
「ハハ…こんなにあっさり信じてもらえるなんて思わなかった…。」
「だからです。」
は改めてにっこり笑うとLに飛びついた。
ぎゅっとLの首元に抱き付くと甘いお菓子のような香りがする。
「L…もしかして今キラ事件の真っ最中?」
「えぇ。そうです。それと…私もに話があります。」
「なに?」
「貴女が言っていたMATRIXについてですが…。」
は彼の元に来る度に自分の世界…つまりMATRIXについて詳細に説明していた。
「?」
「MATRIXという三部作の映画があって…気になって観てみたんです。貴女が説明した通りでした。」
「えっ?それって…」
「つまりの居た世界で私の漫画や映画があったように此方の世界にはの世界の映画があったんです。」
「えぇえ!?じゃあっ…ネオとか…皆の事…。」
「はい。但し、映画の中に貴女が出てこなかったんです。恐らくイレギュラーな存在なのではないでしょうか。」
「そう…なんだ…。私達の世界が映画に…」
「……元の世界に戻らないんですよね?」
「あっ…うん。」
「…不謹慎ですがこうして貴女が私の為に来てくれて凄く…凄く嬉しいです。」
Lの高い鼻先が頬に擦り付けられては擽ったそうに声を漏らす。
「Lは今何歳?」
「25です。」
「じゃあLの方が年上になっちゃったね。」
「そうですね。……。」
「ん?」
「恐らく貴女が始めてです。私の為に泣いてくれた人は。」
「L…。」
「安心して下さい。私は負けません。必ず勝ってみせます。」
はLの首から腕を離し彼を見上げる。
「私もLの為に頑張る。Lも…Lにとって大切な人も助けたい!」
「…。」
Lはじんわりと胸に広がる暖かいモノを感じた。
家族というものを知らない彼はの言葉がとても嬉しかった。
はふと思いついたかのように彼から少し離れた。
「?」
「L!今疲れてない?」
「…いえ。特に…。」
が現れた事によって疲れ等吹き飛んだ、とLは思った。
「ん〜〜まっいっか。」
「??」
彼女は徐にLの身体の前に両手を翳した。
すると彼女の掌から淡い青色の光が溢れLの身体を包み込んだ。
暖かい風に包まれるような感覚と共に光が消えると身体が酷く軽く感じた。
Lは不可思議な現象にと自分の身体を見比べている。
「…いっ今のは一体…?」
「これが私の能力‥だよ。分かりやすく言えば治療師。でも、傷以外に物質の修復とかも可能だよ。」
「だから疲労が消えたんですね。」
「うん。それにデスノートは多分私には効果が無いと思う。」
「何故ですか?」
「アレはこの世界の人の死を綴るノート。私はイレギュラーだから…。」
「でも万が一という事もありえます。」
「だけど…。」
「を危険に晒したくはありません!」
「危険に飛び込む意気がないとLも誰も守れないと思うんだ。」
彼女の決心を込めた瞳を見つめLは困惑した。
「私は私の命を掛けてLと貴方の大切な人を守りたい。出来るなら死ぬはずの人も助けたいの。」
ストーリーでは他にも沢山の人が死んでしまう。
「……分かりました。」
「L!」
「ただし…私から絶対に離れないで下さい。目の届く所に居る事。いいですね?」
「はい!」
Lの妥協案には笑顔で返事をした。
これから彼女とLそしてキラとの戦いが本格的に始まる。
後記
主人公さん登場〜〜♪
色々と特殊設定ですが…上手く活用しないと、ね。
次は詳しい捜査とメンバーとの対面かな。
※この作品が気に入って頂けましたら拍手・コメントお願いします↓※

