□ 第四話 □
















奥州…伊達領…米沢城。


政宗の視界は全て闇に染まっていた。
視線の先にはポツリと幼い頃の自分が屈みこんで泣いている。
彼は舌打ちすると頭を抱えた。


「Ah―…またか…。」


声さえ上げる事無く静かに泣き続ける幼い"自分"。
彼が過去から抱えるトラウマ。
そのせいか何度か未だに夢に見ることもあった。
今回はえらく客観的に見ている等と考えていると"光景"に変化が起こった。


「…What?」


泣き続ける幼い自身の背後に淡い光が生まれた。
柔らかな光は徐々に人の形をとっていく。
政宗の瞳が大きく見開かれる。


「Girl…?」


女性。
というには幼い容姿。
細い線に黒く艶やかな髪。
不思議な雰囲気を持った少女だった。


『どうして泣いているの?』

『誰…?』

『何処か痛いの?』


少女の鈴のような声が響いた。
政宗は自身に普通の幼子に対するように話しかける少女に驚いた。


『……母上は僕を嫌いなんだ。』

『お母さん…?』

『僕なんか生まれなければ…』

『そんなことないよ。』

『え‥?』

『そんなことない。貴方を必要としている人が絶対に居るから。』

『そんな奴いないよ。』


再度顔を俯かせしてまった彼に少女は悲しげに微笑んだ。
そっと淡く光り続ける彼女は幼い政宗をそっと抱きしめた。


『必要とされない人はいないよ。誰も居ないと貴方が思うなら私が貴方を必要とする。』

『アンタが…?』

『うん。寂しくないよ。一人じゃないよ。傍に居るから。』


少女の儚いような暖かい微笑が目に焼きついた。




















「………あの子…ダレ?」


此方は四国の鬼と中国の智将とともに和やかに過ごす異世界からの来訪者。
はふっと目を覚まし先程まで見ていた夢を思い出そうとした。
浮かび上がるのは寂しそうな儚そうな顔をした右目に眼帯を付け、色素の薄い髪をした少年の姿。


「まるで昔の私みたい…。」


ゆっくりと起き上がり大きく溜息を付いた。


あの子はダレなんだろう。
夢。にしてはえらくリアルだった。
きっとあの子も自分と"同じ"だ。
母親がきっとトラウマになっている。


「誰か分からないけど……気になるな。」


冷えてきた身体を摩り布団の中にもぐりこむ。


願わくば。

あの寂しい瞳をしていた少年が救われますように。























後記

ちらりと。ダテムネさんと絡ませてみたり。
とはいえちょびっとしか絡んでないけど。
絡む所か話してもいないけど…;




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