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戦乱の世の花
□ 第二話 □
ちょっと待って…私は自分の部屋にいて…今まさにゲームをしようとしてたよね?
なのにどうして私の後ろに人がいるのさ!!!
「おぃ?」
相手の顔を凝視して固まってしまったに銀髪の男は小首を傾げ訝しげに睨んだ。
「あっ…は?…え?此処何処?」
「おい!」
「はっはぃ!」
自身の足に打ち付けられる暖かい海水に意識が戻ったのか慌てて立ち上がり辺りを挙動不審に見渡す。
男は舌打ちすると更に大きな声を出した。
はまじまじと改めて男を見据えた。
「おめぇ一体何処から着やがった?」
「えっと…ですね。」
あれ…この人…見たことあるような‥?
いやでも銀髪って…ありえないよね。
「というより此処は何処でしょうか?」
「アぁん?何いってやがる?」
「えっと私はどうしてこんな所に??」
気が動転している様子のを見て男は大きく溜息を付くと仕方ねぇといって行き成り彼女を抱え上げた。
俵を持つように肩に乗せられは驚いたように悲鳴を上げた。
「わあああッ!ちょっなにするんですか!!」
「うるせぇ。」
じたばたと暴れるものの体格差からしてかなりあるこの男には適わなかった。
男はそのまますたすたと浜辺を歩き始める。
「どっ何処に連れてく気ですか!」
「俺の城だ。お前気が動転してんだろうが。漂流者か?」
「は?城?漂流者?というより此処は何処なんですか?」
「此処は四国の鬼の棲む島よ。」
「おっ鬼!?って四国!!?」
「おぅ。鬼々島の鬼たぁこの長曾我部元親のことよ。」
「ちょっ長曾我部…?ッ!?」
彼の言葉には言葉をなくした。
先ほどまで自身がやろうとしていたゲーム。
其処に彼がいたのではないだろうかと。
まっまって…あれはゲームだよね?
えっその前にどうして部屋にいたのに海にいるの?持ってたコントローラーもないし…。
それにこの人の髪…地毛…だよね…?
「あっあの長曾我部さん。私はどうしてあんな所にいたんですか?」
「あ?俺が浜を歩いてたら行き成り目の前に出てきたんだよ。」
「出てきたって…それって…。タイムスリップ?いやでも世界が違うし…」
「??たいむすりっぷ?」
「もっもしかして…私…違う世界から着ちゃったみたいなんですが…。」
「は?」
城を目前にして歩みを止めた元親はの方を凝視して目を見開いている。
彼女は彼の顔を見て頭を垂れた。
城内に入り広い一室に入った二人は其処でようやく元親に下に降ろされた。
ややふらつきながら畳に降りると目の前にドスリと元親が腰を下ろした。
も慌ててその場に正座をして彼の眸を見据えた。
「自己紹介がまだでした。すみません。私はと申します。」
「…か。それで、さっきの話は本当なのか?」
「はい。私のいた時代から考えると…恐らく500年程前になるかと思います…。」
不意には視線を落とした。
行き成り現れて、果てには自分は未来から来たといって手放しで信じてくれるだろうか?
それは否だ。
自分ならば信じることなど出来ないだろう。
思考がマイナスへ行きかけた時不意に頭の上に彼の大きな手が置かれた。
は思わず顔を上げる。
「ッ!」
「大丈夫か?」
「ぁ…はい…。」
「しかし500年先の未来からねぇ…。そりゃすげぇな。」
「…え?」
他意も疑いもない覗くのは好奇心の含まれた声音には彼を見つめた。
「信じて…くれるんですか?」
「お前は俺の目を見て話しただろ?普通嘘つくような奴はそんなことしねぇ。それにお前の服装やらそれは見たこともねぇからな。」
それ。とは。
彼女が持っていたペットボトルだった。
「ありがとうございます…。」
「おぅ。それより。お前この辺に知り合いとかいるのか…?と。違う時代から来たんだからいないよな。」
「はい…。」
そもそも彼女は家族とは既に死別していて今現在一人暮らしをしていた。
ただ、自分が違う世界に来てしまって一番心配しているであろう幼馴染の事を思い微かに表情を曇らせた。
今だの頭に手を置いていた元親は彼女の頭を撫でながら問う。
「ここに住むか?というより住めよ。」
「えっでも!」
「気にするな。それにお前の話しもっと聞きてぇからな。」
豪快に笑う彼には瞳を閉じて大きく頭を下げた。
「ありがとうございます。これからよろしくお願いします!」
「おぅ。あぁちょっと待ってろ…。」
そう言って部屋を出て行く元親の背を見ながらは小首を傾げた。
「はぁ…それにしても…どうして此処に着ちゃったんだろう?」
ゲームのせい…だよね。多分。
もっと詳しく攻略本読んどけばよかった!
それにしても長曾我部さんあんなに簡単に信用してくれたけど…
戦国時代ってスパイみたいな人いたよね?
あっでも私みたいな一般人との違いなんて分かるか‥
寛大というか…すごい人だなぁ。
しみじみと考えていると豪快な足音と共に景気良く襖が開かれた。
其処には何やら荷物を持った元親と緑色の特徴的な兜を被った男性が佇んでいた。
「あっ長曾我部さん。」
「ほら。これ着とけよ。さっき濡れてたろ?」
「あぁ!ありがとうございます。」
「そんでこいつは俺と同盟組んでる中国の…」
「我が申す。」
「はいはい。」
元親が説明しようとした時不意に緑の男性が前に出てきた。
彼はの眸を射るように見据えた。
も何故か負けじと彼の相貌を見返す。
「我は毛利元就と申す。そなたの話は聞いている。」
「毛利…!あぁ3本の矢の…あの…。」
「なんだそれ?」
「私の世界で有名な名言を残されてるんです毛利さんは。」
「へぇそうなのか。」
「。」
「はっはい。」
にわかに現れた有名人には慌てて呼ばれた元就の方へ視線を向けた。
「我のことは元就でよい。我もそなたの話を聞きたいのだが良いだろうか?」
「あっえっと元就さん…でいいですか?はい!全然OKです。」
「おけぃ?あぁ俺も元親でいいぜ。」
「はい元親さん!」
柔らかくなる空気には此処に来て始めて花のような笑みを浮かべた。
密かに彼女の暖かい微笑みに元親と元就が頬を染めたのはご愛嬌。
還れるか分からないけど。
でも、此処にきて…元親さんや元就さんと会えてよかった。
後記
チカちゃんと元就さんは仲が良さげですよね。
次は逸話みたいな感じで行こうかと。
ガンバロ〜。
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