□ 第一話 □






















『 お母さんごめんなさい… 』

『 アンタナンカウマナケレバヨカッタ。 』

『 そんなこと言わないで。』

『 オマエナンカイラナイ 』

『 嫌わないで。 』

『 ……シネバイイノニ。 』

『 お母さん。 』

『 嫌わないで。 』

『 私に触れて。 』

『 拒絶しないで。 』

『 私を‥消さないで。 』















「ッッッ!!!?」


息が荒い。喉がからからする。
夢…?


は勢い良く布団を跳ね上げ飛び起きた。
呼吸は荒く体中は汗でびっしょりだった。
微かに震える身体を抱きしめ、月明かりの注ぐ小さな部屋で一人大きく溜息を付いた。


「なんだってあんな夢…。何年も前のことなのに。」


細い肩を更に小さくして嗚咽と共に涙が頬を伝った。
ぎゅっと握り締めた自分の腕を虚ろに眺めながら泣き疲れて眠りに落ちていった。
彼女の白く華奢な左手には歪な傷跡が何本も蚯蚓腫れのように印されていた。












「あ〜…夢見が悪いなぁ…。なんだってまたあんな…いや。考えるの止めよう。うん。」


は頬を景気良く叩き次の講義の為にノートを取り出そうとした。


ドカァッ


「ぐはっ!!」

「な〜にぃ辛気臭い顔してんだよ!」

「っう…あんた…ぁ!!」

「どうしたのさ。今日は朝からぼーっとしてさぁ。」

「だからっ背後から行き成り肘打ちをするか?!しかも後頭部!!下手したら死ぬよ!」

「大丈夫大丈夫〜。んでどうしたの?」


思いっきり私の後頭部を強打しつつも満面の笑みを称える彼女は私の幼馴染。
はいつでも一緒だった。だから私のどんな変化でも目ざとく気づいてくれる。
でも最近スキンシップ(談)が激しい気がする…。


からからと笑うの前の席に座ると首を傾げた。
は後頭部を摩りながら深い溜息を付いた。


「昔の…夢…みたの。」

「………。」


ぽつり、と。
呟いた言葉が辺りに響いた。
は彼女が意図している辛い過去を知っている。
其処から救い上げてくれたのが他でもない彼女なのだ。
は先ほどまでの作り笑いを消して真剣にの両の手をぎゅっと握った。


「っ‥?」

「大丈夫。あんたは今此処にいる。あたしと一緒に此処にいる。」

「うん…。」

「あんたはあたしにとって大事な大事な大事な!友達。あたしにはあんたが必要なんだからね!」

「うん…ありがとう。」


呪文のように紡がれる言葉が塞ぎこんでいた心の内にすんなりと入ってくる。
は微かに瞳を潤ませながらもにっこりと微笑んだ。


「そうそう!あんたは笑ってないとね!」

「うん!」

「(あ〜もう。可愛いいなぁこんちくしょう!)」


ニコニコ笑いつつ此方を見てくるの頭をぐりぐりと撫でながらは悦に入っている様子。
ふと思い出したかのように自身の鞄を漁りだした。


「?」

「そうそう!この前貸したゲームクリアしたって言ってたわよね。新しいの持ってきた。」

「今度はなに?この前みたいなシューティングは無理だよー。」

「あはは。大丈夫あんたデビ○メイ○ライとか平気よね?」

「うん。アクションならOK〜。」

「じゃ〜ん。今回は和風に…。」

「戦国BASARA?これって戦国時代の…?」

「そうそう!有名所オンパレードだよ。攻略本も渡しとくね。」

「ありがとう…。」


が鞄から取り出したものはPS2のソフトと攻略本。
ケースの表面を眺めながらは微かに首を傾げた。


「?……なんか……戦国ぽくないね。」

「あ〜…それ史実無視してるもん。だって槍から火が出んのよ?」

「……そりゃまた物騒な…。」

「ストレス発散にもなるからやってみなよ。」

「うん…。」


パラパラと手にした攻略本を眺める。


「あっこれ複数から選ぶんだキャラクター。」

「うん。最初は少ないけど天下取るたんびに増えてくから。」

「天下…ねぇ。」

「その赤いのと青いのいるでしょ?」

「あっうん。”真田幸村”さんと”伊達政宗”さん?」

「そ。最初はその二人のどっちかからやった方がいいと思うよ。操作覚えるつもりでさ。」

「了解〜〜。」

「じゃあ感想楽しみにしてるね〜。」

「うん〜。あっ因みにのお勧めのキャラクターは?」

「あたし?あたしは断然伊達政宗!かっこいいわよ〜。」

「へ〜…相変わらず濃いの好きだね…。」

「やってみればわかるって!あっやば次ぎ始まる…。それじゃね。」

「うん!」











ふ〜…今日も疲れたぁ…。


どさり、と。
ベットに倒れこみながら大きく伸びをする。
あれから何事もなく講義を聴き、バイトをしてからようやく帰宅した所だった。
もそもそとベットから降りてキッチンへ向かう。


「ん〜…お腹へってないし晩御飯はいっか…。」


冷蔵庫からペットボトルに入ったミネラルウォーターを取り出し飲みながらベットに腰掛けた。


そういえば…が貸してくれたゲーム…早速やってみよかな。


は和風のゲームはプレイしたことなく、しかもそれがあの戦国時代の武将達だ。
わくわくしながらプレステの準備をする。
ソフトをディスプレイにセットして。
起動する音をぼぅっと聞いていた。
足の間にペットボトルを挟んで攻略本を横目に見る。


「お〜……映像綺麗…。ほぉ。この人が伊達さんと真田さんか…。」


しばらくしてOPムービーが始まり。
半ばは呆然と画面に見入っていた。


「えってかなんで竜巻!?おぉこんな可愛い女の子もいるのかぁ…。げ…槍って飛べるわけ??」


はぁ〜?と首を傾げながらもOPが終わりポーズ画面に入る。
はコントローラーを持ちながら暫し考えた。


「最初は天下統一からだっけ?えっと…。」


現れるキャラクターのイラスト。
そこから一人プレイキャラクターを選択する。


「あれ?」


どんなキャラクターがいるのかとカーソルを動かしていて目に留まった人物。
白っぽい髪に左目に眼帯をつけた男のイラストが出ていた。


「??最初って6人からしか選べないんじゃないんだっけ??”長曾我部元親”?名前長っ…」


繁々と”彼”を見つめ少し悩んでいる様子。


「バグとかじゃないみたいだし。選択画面出てるしね。うん。この人にしてみよ。」


カチリとボタンを押した。

辺りに響くのはゲームの起動音でも。

家の前の車道を走る車の音でもなく。

唯。

引いては戻る波の音だけだった。


「は?」

「おめぇそんな所でなにやってんだ?」

「っ??」


背後からの低い声音に恐る恐る振り返れば、
先ほどまでテレビ画面で見ていた男そっくりな男が訝しげに此方を凝視していた。

























後記

あはは。やはりはまっちまった!しかも最近多い混合じゃなくて久々にまっとうトリップ!
ややわけありヒロインですがギャグで行きますよ〜vv
まずはチカちゃん!




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