間小話







□ 間小話 □
















「ん…ぁれ?」


瞳を開けると見知らぬ天井が見えた。
あっ…そっか。


「私。元親さんのお城に居るんだ…。」


やっぱり夢じゃないよね…。
昨日あの後私の世界の事とか話して…それで。


「うぁ…やっぱり着慣れてないからなぁ…」


見事に着崩れてる。
そうだ。思い出した。あの後疲れた私は元親さん達に断って部屋に戻ったんだ。
でも本当。こんな行き成り現れた奴にこんな豪華な部屋くれるんだから元親さんって…。
大らかというか…大物というか…。


「布団畳んだ方がいいよね。」


お世話になるんだから手を煩わせないようにしないと!
あ。そういえば今日と買い物行くって言ってたっけ…。
あ〜…怒るだろうなぁ…。
って帰れるか分からないよね。


「………心配してるかな?」


帰れない。もう。に逢えないかもしれない。


ぽたり。と。
頬を雫が伝った。


怖い。怖い怖いよ。
此処は私が居た世界じゃない。
戦が起こって、身近な人が死ぬかもしれない。
あんなに親切な元親さんや元就さん。
家臣の方達。優しい女中さん。
これはゲームじゃないんだ。


「現実‥だもんね。」


もし此処で死んだら元の世界に返れるのかな?


ふと浮かんだことに自嘲気味に笑う。


ううん。きっと"私"は死んじゃう。
元の世界にもし戻れても元親さん達は居ない。
絶対に後悔する。

それに少しの間しか接していないけど。
彼等はとても優しい人達だ。
自惚れとかではなく、きっと私が死んだら彼らが気にする。
死んだ人は楽でも残された人は辛いから。


「しっかりしないと。」


パンッと小気味いい音が部屋に響いた。


ッシ!!気合入れた!もう大丈夫だ!
泣かないぞ!
もし戻れるなら、笑って戻ろう。
もし戻れないなら、笑って過ごそう。


「さってこれ何処に直すんだろう。」


描け布団を抱えたは周囲をきょろきょろと見渡した。
と、その時。ドカドカと大きな音が廊下に響いた。


「え?」


スパァンと景気のいい音と共に開かれる襖。


「よぉ。起きてっか?」

「あっ元親さんおはようございます。」

「早ぇえな。……なにしてんだ?」

「えっあっ布団を。」

「んなもん置いとけ。ほら朝飯行くぞ。」

「わわっ。」


そういうと元親さんは私の手を引っ張って部屋を出ようとする。


「っと。……?」


不意に止まった元親さんの背にぶっかってしまった。
しかし大きい人だなぁ…。
昔の人って小さいんじゃないのかなぁ…?


「泣いてたのか?」

「え?」


元親さんは少し屈んで私の顔を見ている。
目、赤くなってたかな…?


「大丈夫…ですよ。」


小首を傾げて彼を見上げてみる。
元親さんは眉を寄せて少し怖い顔だ。


不意に彼女の頬に元親の大きな掌が触れた。


「元親さん?」

「辛かったら言えよ。」

「っ‥はぃ。」

「おっし。飯だ飯!!」


涙の痕を指先でなぞってからその手を彼女の頭に乗せわしゃわしゃと撫ぜた。


「もッ元親さん私子供じゃないです…。」

「お前頭小さいなぁ〜。」

「ぎゃわッ。掴まないで下さいッ!!元就さん待ってるんでしょ早く行きましょ―」

「おぅ。忘れてたぜ。」






























後記

逸話その一。その二も描く予定です。
どんなに気丈でも天然でもこんな状況では気が動転しますよね。
主人公さんは残された者が辛いことを知っています。
というか名前変換少ないッ;;




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