繋ぎとめる
繋ぎとめる






















…。」

「ん…元親さん‥?なんですかぁ……??」

「ちょっといいか?見せてぇもんがあるんだ。」

「はぁ…?」


草木も寝静まる丑三つ時、それを少し過ぎた頃。
自室にて眠っていたを起こしたのは元親だった。
は眠い目を擦りながら彼の後を付いていく。


「転ぶなよ。……おら手ぇ貸してみ。」

「は〜ぃ‥。」


明かり一つない廊下を二人は進む。
ふらふらの足取りで今だ夢の中に入りかけているに苦笑し、そっと小さな彼女の掌を握った。

暫く無言で進み、ふと彼女の隣の部屋…元就の部屋から微かな身動ぎの気配を感じ取った元親は
不意に彼女を抱え上げた。片腕で彼女の腰と足を支えるその持ち方はまさに幼子を持つようで。
体格差のかなりある二人だからこそ出来たことだろう。
また普段ならば極度の接触に驚き声を上げるも今だ眠い様子で大人しくしている。


「少し急ぐぞ。」

「ふぁぃ。」


肌寒いのか元親の上着をきゅっと掴む彼女の仕草に笑み歩む速度を上げた。


















。おぃ。起きろ!」

「ん…ぁれ?此処‥何処です?」


規則的な心音と彼の体温で再び夢の世界へ旅立っていたを揺り起こす。
は緩慢な動作で無意識の内にしがみ付いていた元親から顔を離し辺りを見渡す。


「見せたいもんがあるって言ったろ。」

「あれ夢じゃなかったんだ…ぇ?」


月明かりの中映し出される黒い影。
は自身の手を恐る恐る伸ばしその黒い影に触れてみた。

ひんやりと。

金属の冷たさが指先を通じて感じられる。
は小首を傾げ今だ自身を抱き上げている元親を見上げた。


「なんですこれ?」

「富嶽だ。」

「え!?これが…?」


何度か元親の話に聞いていた。
今だ実際に見たことはなかったが何時か見せてやると彼は言っていた。
徐々に夜目が利き始めたは黒い影の正体を見る。
ほぅ。っと吐息を吐き。
更に疑問に思った事を彼に問うた。


「でもなんでこんな時間に?」

「………話があってよ。」

「話…?」


薄闇の中でも僅かな光で輝く彼の銀髪が微かに揺れる。
は小首を傾げたまま彼を見上げていた。


「わっ。」


ひょいっと富嶽の上に彼女の身体を乗せて元親と視線が揃う。
彼女がこの地を訪れて早数ヶ月立っていた。
初めは好奇心と親切心で接していた彼にとってその感情が変化するのには十分すぎる時間だった。
この戦乱の時代彼女のように素直に、純粋に笑える奴がいるだろうかと。


「元親さん?」

「お前の噂が広がってるそうだ。」

「私の?」

「あぁ。あることないこと、な。」

「なんでですかね??」

「それほど目立つんだよお前は。」

「そうですかねぇ…?」

「他の武将達がこぞってお前を狙ってくるかもしれねぇ。」

「えっ!?」

「此処にも攻め込んでくるだろうよ。」

「…………私は…。」


俯いてしまった彼女に元親は苦笑した。
彼女が時折遠い目をしていることを知っていた。
まるで遠く離れた誰かを思うように、慈しむ様なその視線。
どうしたと問いてもなんでもないと返されてしまうけれど。
彼女が思っていることは知っていた。


「なんて顔してんだよ。」

「でもっ!私が居たら此処は…」

「そんな事考えるな。俺が言いてぇのはそれじゃねぇ。」

「…ッ。」


大きな掌で何時もするように彼女の頭を撫でる。


「お前は何時か帰るのか?」

「え?」

「お前の居た時に。」

「……分かりません。」

「そうだよな。行き成りこっちに放り出されたんだよな。」

「…………。」

「でもあっちのも大切な奴が居るんだろ?家族とかよ。」


は自分の事を余り話さなかった。
自分の境遇や家族の事、友人のこと。
もっぱら話すのは便利な道具の事や自然のこと。


「家族は居ないんです。……でも大切な友達は居ます。」

「そっか…。」

「心配してると思う。怒ってると思う。でも…私は…ここが好きです。」


は何処か幼子が母親に縋るように元親を見上げる。
彼の服の端を掴んだままだ。


…。」

「迷惑を沢山掛けてしまうかもしれない。でも‥私…此処に居たいです…。」


少し俯いた彼女の白い頬を涙が伝う。
パタパタと零れ落ちる雫は元親は指先でなぞった。
彼女の両頬をそっと包み自身へ向かせる。


「ッ…。」


二人の視線が絡みは更に涙を零す。


「悪ぃ。お前を泣かせるつもりはねぇんだ…。」

「ふっ…う。」

「お前が此処に居たいと望んでくれて嬉しいんだ。」

「元親さんッ。」

「全然迷惑なんかじゃねぇ。寧ろ…此処に居てくれ。お前が居ないと俺は…。」

「はぃ。私‥此処に…元親さんの傍に居たいですッ…」


元親はの頬を掠めるように口付け、目の端に付いた涙を舐めた。


「ん…元親さん…」

。好きだ。お前が…どうしようもねぇほど好きだ。」


元親の告白には瞳を大きく見開くがすぐに嬉しそうに微笑んだ。


「私も…元親さんが大好きです。」

「ずっと俺の隣で笑ってろ。帰るったって帰えさねぇ。」

「はぃ‥。」


涙を零しながら嬉しそうに笑うに元親も笑みを浮かべた。
両の頬を包んだままそっと顔を近づけ桜色の唇にそっと触れるだけのキスをした。


「ん…。」


ちゅっ、と。
軽く離れてもう一度口付ける。
微かに角度を変えて促すように唇を舐める。
彼に合わせる様に薄く開いた唇の隙間から舌を滑り込ませる。


「ふ。んん…。」


深い口付け等した事の無いはビクリと身体を大きく震わせ元親の服を掴んだ。
その間にも元親の舌は彼女の口内を撫で上げ、歯列をなぞる。
微かに唇を離し角度を変えてまた口付ける。
彼女の全てを捕らえる様な口付けが何度か続けられ
すっかり身体の力が抜けてしまったをぎゅっと抱きしめる。


「初めて‥か?」

「はっはぃ…。」

「そんじゃの"初めて"全部俺が貰おうか。」

「え?」

「全部喰わせてくれよ?」


抱きしめていた彼女を離し。
先程までの優しげな表情とは180度違う不敵な笑みを浮かべ。
舌なめずりをする元親には思わず後退した。













私を 繋ぎとめるのは 貴方への 思い

離さないで

ずっと 繋ぎとめていて



















後記

一応短編なんで連載とリンクしてません。設定はリンクしてますがね。
逆ハーなのでチカちゃん落ちじゃないですからね(笑)
因みに続きはエロですのでお気を付けを!




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