間小話5







□ 間小話5 □
















「………………。」


飲めや歌えの大騒ぎ。
ドンチャン騒ぎが続く中は料理を食べる手を休めお茶で喉を潤した。
周りには完璧に出来上がった男達が赤い顔で騒いでいる。
の隣に座る元就もまたちまちまと晩酌をしつつ冷静に周囲を見ていた。


「ごちそうさまでした!あいかわらず此処のお料理は美味しいですね。」

「そうか?それにしても……。」


元就はどこか冷めた目で宴の中心に居る元親と政宗に視線を向けた。


「あやつらは…。」

「あはは…。」


冷ややかな元就の視線には苦笑しか出ない。
あれだけ険悪な雰囲気になっていたはずの二人は今や互いに杯を交わし合い笑いあっている。
が検分するに、元親と政宗は元々の気質が似ているのではないかと伺える。


「ハハッ!い―飲みっぷりじゃねぇか!」

「そういうアンタもいける口だな。」

「しかし…さっきは悪かったな…行き成り取り乱しちまってよぉ。」


元親は政宗の杯に酒を注ぎつつ少し申し訳なさそうに話す。
政宗は元親と反対の隻眼で彼を見据えニヤリと笑った。


「いや。気にしてねぇよ。」

「あいつから詳しく聞いたからな。……まぁは渡さねぇけどな。」

「宣戦布告かぃ?いいねぇ。楽しそうだ。」

「まぁ負ける気はしねぇがな!」

「それはこっちの台詞だぜ。」


何が楽しいのか牽制しあいながらも笑いながら杯を進める。


宴も酣。
続々と寝入って行く家臣達を眺め。
元就は先に部屋に戻った。
は女中と一緒になって酒臭い部屋の中皿等を片付けている。


「ふぅ…。」


一頻り片付いた中は今だ飲み続ける元親と政宗に視線を向けた。
まだ起きていると思っていたのだが元親の視線は虚ろで眠そうだ。


「元親さん。そろそろ休んだ方がいいですよ。」

「あ〜‥ぃ…まだ平気だぞ?」

「呂律が回ってないじゃないですか!ほら寝ますよ〜。」


眠たげに瞳を擦る彼が可愛く見えてはふっと微笑んだ。
普段白い彼の肌は酒のせいか僅かに赤みを差している。


「ほら!殿!ちゃんを困らせるなよ〜。」

「アぁ?」

「ほらほら!」


ずるずると家臣達に引きずられていく元親を見送りは次に政宗を見た。
先ほど騒いでいた時とは打って変わって物憂げに杯を傾け眼帯をしていない左目はに向けられている。
は鳶色の瞳の憂いに少し驚くとおずおずと彼に近づいた。


「伊達さんもお疲れでしょう?もう休んだ方が…っきゃ!?」


杯を持っているのとは反対の手で急に彼女の腕を引っ張った。
そのままの勢いで政宗の胸元へ倒れこんでしまう。
普段戦服が半裸な元親で見慣れているとしても彼女は慣れていなかった。
は耳まで赤くなると慌てて離れようとする。


「わわっ!?ごっごめんなさいッ!」


広がる酒の香りと間近に感じる政宗の体温に動揺を隠せない。
政宗はの初々しい反応に口端を上げ笑った。


「Honey does a pretty reaction.(可愛い反応するじゃねぇか。)」

「なっ!?だっだからハニーはやめてくださいッ!」


発音の良い彼の英語を何とか聞き取り思わず抗議する。
彼女の抵抗すら今の政宗には愛しく頬が緩む。


「…邪魔者も居なくなったし…ようやく二人だけで話せるな。」

「えぇ!?」


ふと気が付けば部屋にまだ居たはずの女中達の姿が見えなくなっている。
は焦った様に辺りを見渡している。


「だっ伊達さんッ!とにかく離して下さい!」

「Ah〜?………Call by the name.(アぁ?………名前で呼べよ。)」

「へ?」

「だから”伊達さん”っての止めろよ。」

「なっでも…。」

「元親達は名前で呼んでるだろ?…ほら。言ってみろ。」

「うわ!」


何時の間に杯を置いたのか、両手で政宗の膝の上に乗せられたは逃れることも出来ず。
右の隻眼に射抜かれたように固まった。


「……言えないならこのままKissしちまうぞ?」

「うぇあッッ!?」


宣告通り徐々に顔を近づけて来る政宗には半ばパニックに陥っていた。


なっなんでこんなことに!?
伊達さん何考えてんですかッ―!!?


「わわッ。ちょっ!?」


必死に両手で彼の胸を押し返そうとしても力では敵わずそのまま近づいてくる。
唇がもう少しで触れ合う…その時。


「まっ政宗…さんッッ。」

「…………敬語が気になるが。まっ許してやるか。」

「うぅ…。」


の頬はピンク色に染まりパニックになっていた為涙目だ。
政宗は至近距離の彼女の顔に見入りクスリと笑った。


「ご褒美だ。」

「ッ!?」


チュッ


そのまま顔を近づけ頬に軽く口付けた。


「だっ伊達…じゃなかった。政宗さんッ!!」

「おぉ。偉い偉い。」

「もぅ…。」

「しかし……本当に逢えるなんて思ってもみなかったぜ。」


政宗は愛しげにの瞳を見据え柔らかな髪を梳く。
射抜くような鋭い瞳ではない、何処か柔らかな瞳に見つめられは気恥ずかしそうにしている。
そもそも。異性と此処まで接触する事は滅多に無いのだ。
それがあの伊達政宗…とりわけ綺麗な顔をした相手だから余計にの心臓には悪かった。


元親さんも元就さんも綺麗だけど政宗さんも綺麗だな…。
男の人なのに肌がつやつや!
やっぱり寒い所の人だからかな…あれ?でも元親さんもすごい肌白くて綺麗だよね…。


しみじみと違う所に思考が行きかけた彼女を政宗の指先が現実へ引き戻した。
彼の長い指がの頬から唇に触れゆっくりとなぞっている。


「まっ政宗さん…。」

「傍に…居てくれるんだろ?」

「あっ…えっと…。」

「今更嫌だ。なんて言わせねぇ。」

「えぇ!?でもあれは…。」

「俺はあんたに傍に居て欲しいんだ…。」

「ッ。」


耳元でやや掠れた声で囁かれては身を竦めた。
すると不意に政宗は彼女の身体を離した。


「この位にしとくか。Honeyには刺激が強すぎたか?」


ククっと笑う政宗には一瞬呆けると真っ赤になって怒り出した。


「かっからかわないで下さい!」

「心外だな。からかってねぇよ……どうやら俺のMaidenは色んな野郎を骨抜きにしてるみたいだしな。」

「え?」

「まぁ…焦る事はねぇ。これからよろしくな。My Honey?」


目の前で楽しげに笑う政宗には勢い良く立ち上がると。


「おやすみなさい!!」


そのまま一気に部屋を駆け出して行った。
そんなの後ろ姿を見送りながらまだ杯に残っていた酒を飲み干し政宗は楽しげに微笑んだ。




















後記

え〜…予想外に…伊達さん書きやすいです(笑)あれですね。
属性的にDMCのダンテに似てるし…書きやすいかも…
チカちゃんより積極的な気がする;




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