さようなら
-----------さ よ う な ら
『 ヴィンセント…さようなら。 』
『 ルクレッア!!!! 』
遠のいていく彼女。
その表情は何処か懺悔を含んでいるようで。
私の手は彼女を捉えられなかった。
私は彼女を救うことが出来なかった。
私の…罪だ。
「ッッ!!」
「わっ…。どうしたのヴィンセント?うなされてましたけど…」
ソファでうたた寝していたらしいヴィンセント。
行き成りがばりと起き上がったため向かいのソファに座っていたは驚いたように彼を見つめている。
普段顔色の余りよくない彼の顔は何時もより蒼白で、うっすらと汗をかいているようだ。
視線をさ迷わせ彼女の声に其方を向く。
「夢…か。」
「大丈夫ですか?」
「あぁ…。」
乱れた鼓動を自覚しながら彼は深く溜息を付いた。
「…………。」
忘れることなど出来ない。
彼女の存在を。
罪と罰を。
さようなら…か。
「ヴィン?」
「……なんでもない。」
「?」
は考え込んでいる様子のヴィンセントの邪魔になるかと考えたのか徐に立ち上がりドアに向かう。
ヴィンセントは彼女が立ち上がったことにも気づいていない様子だ。
「…ルクレッアさんのことかな…」
もし。彼女が宝城と出会っていなければ。
そうすればきっとヴィンセントと穏やかに結ばれていたはず。
でも、今彼女は…壊れてしまった。
は其処まで考えて首を傾げる。
「どうすることも出来ないよね。」
これは彼の問題だ。
他人の介入することではない。
ルクレッアさんのことは彼自身が考えなければいけないことだから。
「でも…辛そうなのはきついな‥。」
手にしたカップに暖かいコーヒーを注ぎながら溜息を付いた。
「…?」
ヴィンセントは不意にが部屋に居ないことに気づき辺りを見渡した。
するとドアを開けが部屋に戻ってくる。
「あ。コーヒー要ります?一応淹れたんですけど。」
「あぁ。すまない。」
「いえいえ。」
はカップを渡すとニコリと微笑みドアの方へ引き返した。
彼女の行動に首を傾げるヴィンセント。
「何処か行くのか?」
「少し出てきます。ヴィンは考え事してるみたいだし。そういうのは一人の方が考えやすいでしょうから。」
声をかけられ振り返りながらやわらかく微笑む彼女。
だが、その瞳は何処か寂しげで微笑むというよりも苦笑に近かった。
その時。
「ッ!?」
「それじゃいってきます。」 『 さ よ う な ら 』
とルクレッアが重なって感じた。
言葉のニュアンスに。
カチャンッ
「え?」
「行くなッ。」
「ヴィン‥セント??」
カップが落ちる音と彼女が彼の胸に抱かれるのは同時だった。
「どうしたの?」
「行かないでくれ…。」
えっと…これはどうすれば…?
彼女の問いかけにヴィンセントはただ”行くな”と言う。
は戸惑いつつも長身の彼に包み込まれるように抱きしめられたまま思案した。
「ヴィンセント。私は何処にも行きませんよ?」
「……………。」
そっとヴィンセントの頬を下から両の手で包み諭すように問いかける。
「私はずっと一緒に居ますから。」
「…。」
彼女の言葉にヴィンセントは彼女を抱く腕に力を込めの首筋に顔をうずめた。
の視界は彼の綺麗な黒髪に染まった。
ルクレッア。
君を救えなかったのは私の罪だ。
もしこの身が朽ちる時まで永遠に背負わねばならないもの。
だが。
護りたいと。今度こそは何があっても護りたい。そう思える相手が現れた。
彼女を愛する権利を私は持っているのだろうか?
ルクレッア…君は愚かな私を許してくれるのだろうか。
後記
重ッッ。。
ヴィンはなんだか重くなりますねぇ…セフィはギャグぽくなるんだけど。
ルクレッアさんとヴィンセントの繋がりは切れない物だと思うんですよね。
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