世界の何処かで




世界の何処かで



※このお話はMATRIXと無問題2のパラレル合作になります。苦手な方はご注意下さいませ。




















は人通りの多い通りから離れ人の少ない港へと足を向けた。
キーメイカーに貰った鍵は彼が消えても有効だった。
彼女が望んだ所に導いてくれるその鍵を彼女は肌身離さず持ち歩いていた。


「それにしても…セラフ何処だろう…;」


この鍵があれば好きな時に好きな場所へ行くことが出来る。
はそれを利用して専門的なものは各世界へ買いに行くことがあった。
勿論その時はセラフが一緒だ。
今回は彼女の好きなお茶を買いに向かった先…其処が問題だった。
市場は人通りが多く様々な物に目を奪われていた彼女はセラフとはぐれてしまったのだ。
は辺りをきょろきょろと見ながら当てもなく歩いている。


「携帯とか持った方がよかったかも……。はぁ…」


港の割には漁船もなく人も居ない。
ふと気が付くとコンテナなどが多数見える。


「にしても…此処どこら辺だろう?…あ。」


の視線を捕らえた人物。
何処かの某双子の様に上下とも白いスーツに身を包んだ男性。
背後からなので良く分からないが背はかなり高そうだ。


「…ツインズみたいな人もいるんだなぁ…。」


丁度良いので目に付いたその人物に場所を聞こうと近寄る。


「あの。すいません。って…セラフ!!」

「‥?」


声を掛けそれに気が付き此方を見た男の顔には十分見覚えのあるものだった。
それは何時も側に居る翼の無い天使そのものだった。


「どうして…あれ?」


だが何処か違和感を覚える。
まず、セラフは何時も通りチャイナ風の上着に黒のズボン、そして何時も付けている丸いサングラスを掛けていたはずだ。
だが目の前の男性は白い上下のスーツに派手めのシャツを着ている。
確かに容姿は同じなのだが決定的に瞳の雰囲気と口元の髭が違う。


「(セラフ…じゃない?)」

「おい。なんだ?」

「ぁ‥いえ。えっと…知り合いに良く似ていたもので…。」


聞こえた彼の声とセラフの声は全く違っていた。


そういえば…もしかしてこの人は人間なのかな。
それなら実在する人間とセラフが似てるって可能性もあるかも…。


そうは考えると目の前の訝しげに此方を見てくる人物に慌てて会釈をした。


「すいません。ちょっと知り合いとはぐれてしまって…」


男は顔を上げたの顔を凝視している。
視線を下に徐々に下ろして行き最終的に彼女の瞳を見つめる。


「そんなに俺とそいつは似ていたのか?」

「ぁっはい…(見た目は…;)」

「そうか…。お前日本人か?」

「へ?あっはいそうです。」


男は彼女の返答を聞いて暫し考えているようだ。
は不思議そうに彼を見上げ小首を傾げている。
不意に男はニヤリと笑うと彼女の顎を捕らえ自身へと向かせる。


「俺はベンだ。お前は?」

「あっといいます。」

、か。」


ペンは笑みを深くし彼女の目線まで身体を折ると笑みを深くした。


「気に入った。俺の物になれ。」

「は?」


一瞬彼に言われた内容が理解できなかったは思いっきり間抜けな返答をしてしまう。


「っ‥ぇえ////」


言葉の内容を理解したは真っ赤になると慌てて彼から離れようとする。
だが、それを予期したベンはすかさず彼女の細い腰に腕を回し捉える。


「ちょっベンさん。なっ何言い出すんですかいきなり!!!」

「気に入った。それだけだ。」

「なんですかそれはー!!!!」


彼の腕の中で暴れるものの、彼女の抵抗等(しかも動転していて力が入らない。)
彼には全くの無意味だった。
顔を真っ赤にし彼の胸を強く押す彼女にベンは楽しげに笑みを浮かべた。
と、その時。彼女の良く知る彼の声が響いた。


ッ!!!」

「セラフ!」

「………?」


セラフは珍しく焦ったように彼女達の元へ駆けて来る。
その表情は険しい。


「こいつがの探している奴か…。しかし此処まで似てると気持ち悪いな。」

「だ か ら!!離して下さいってば!!」

「ッ!…誰だ?」


ベンは駆けて来るセラフの顔を見て驚いたかのように眉を動かす。
セラフも彼女を抱き締めている男の顔を見て驚いたように息を呑む。


「セラフ…あのねこの人は……。」


が何事かセラフに説明しようとした時不意にベンが彼女の声を遮って話す。


「お前には悪いがこいつは俺の物だ。」

「な"っだからなんでそうなるんですか!!」

「なんだと…。」

「怪我をしたくなかったらさっさと帰るんだな。」


彼女を抱きニヤリと笑うベンをセラフはギッと睨みつける。
サングラス越しながら彼がとても怒っているのが良く分かる。


「…彼女を離せ。」

「…セラフ?」


一際低い。
冷静沈着な何時もの彼からは想像も出来ないような怒りに震えた声。
は抗議するのも忘れセラフを見つめた。
ベンはセラフの様子に眉を寄せる。


「なんだお前もヤルのか?それなら相手してやろう。」

「ちょっベンさん!」

「…………。」


ベンは不適に笑うと彼女を離しセラフに向かって構えを取る。
セラフは静かに自身の構えを取り彼を睨む。
は焦っていた。
ベンは恐らく人間だ。セラフは最強とも謳われるプログラム…。
どちらが強いかといわれればそれは言葉にするまでも無い。


「ちょっセラフは相手は人間だよ!!」

「……は下がっていてください。」

「でも…。」

「殺しは‥しません。」

「余裕だな?」


会話を聞いていたベンは卑屈に笑うと拳をセラフへと叩きつける。
彼の腕は相当な物だったのだがセラフはなんなく彼の拳を受け流すとがら空きだった腹部へ拳をいれる。


「ぐっ‥ッ!?」

「……はぁッ!!」

「なっ!?!」


ドグッという鈍い音ともにセラフの回し蹴りがベンの脇に入り更に其処から連続して拳を叩きつける。
目に見えない速さ。
スピード共に感じる凄まじい力。
ベンは目を見開きその場に倒れこんだ。
セラフはそのまま前屈みになったベンに対して駆けようとした時ベンの前にが立ち塞がる。


「ッ!!……。」

「これ以上はダメだよ。」

「………すいません。」

「ううん…ベンさん。大丈夫ですか?」


は倒れこんだままのベンを支える。
ゴフッと吐き出した血が生々しい。
彼は片手で口元の血を荒々しく拭うと彼女の手を払う。


「ちっ…。」

「ぁ……セラフ‥手加減無しでやったでしょ…;;肋骨イってるよ。」


彼の胸元に触れながらはやれやれと頭を振るう。
そっと両の手を翳すと其処から柔らかな青い光が放たれた。


「なんだ…?」

「じっとしといてください。骨は繋げとかないと…臓器にでも刺さったら大変でしょう。」


翳していた掌を離すとベンは不思議そうに彼女を見る。
先程まで焼けるような痛みを感じていた彼は彼女が触れていた場所をそっと触ってみる。


「……骨が…?」

「骨は繋がりましたけど他の外傷は…多分治ると思いますから。」

「おぃッ…!」


はそう言うとにっこりと微笑み彼の元から立ち上がった。
セラフの方を向けば彼は苦笑して彼女を見ていた。


「セラフ。遅くなっちゃうね。帰ろう?」

「……えぇ。」

「それじゃあベンさん…えっとご迷惑お掛けしました。」

っ‥まてっ!!」


はペコリと頭を下げるとセラフと共にゆっくりとその場を離れていく。
ベンは体中の痛みがある為思うように動かない身体に叱咤した。


「ッ…クソ…。」


あの女…
さっきのは…あいつがやったのか?
傷を治すだと?そんな人間が居るのか?
ッ……


「絶対に…見つけ出してやる。」


世界中を周ってでも絶対に手に入れてみせる。


「逃がすか‥必ず見つけてやる。ッ……。」


















「セラフ…。ごめんなさい…。」

「どうして謝るんです?」

「だって…。」

「私こそすいません…‥。」

「ううん…。えっとでも一応助かった…から。」


はセラフと手を繋ぎ人通りの多いチャイナタウンを歩く。
隣に居る彼を見上げ花のような笑みを浮かべると。繁々と彼を見る。


「…?」

「次からは間違えないようにするね。」

「…次からは絶対に離しません。」

「うん。」


此方を向いて微笑するセラフにも笑みを返した。










この世界の何処かで。
また翼の無い天使とそっくりな彼に会う日があるのだろうか?
それは彼女にも分からない…



























後記

コリンさん繋がりで…無問題2借りました。
いやー出てきた時の衝撃はすごかった(笑)
色々すごかった。うわっ!?セラフ――…あれ?
って感じで。なんか良く喋り方が分からなかったので;;(泣)
もっぺん見て勉強します;




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