永久の契り




貴方と出会うことは運命だったの?
それとも、気まぐれな悪魔の仕業?
存在しえないモノとの出会いを……

To meet you is to have been fate?
Or, it is the deed of the wanton devil?
It is..., encountering the person who can not exist.


















「お父さん…お母さん…」


架十 瑠璃(かじゅう るり)18歳。
今日は彼女にとって忘れられない日になる。
今まで育ててくれた愛しい父と母の死。


「何で…。」


何で私を置いて行っちゃうの?
一人にしないで…。


瑠璃の両親は彼女を一人家に残し外出先から帰る途中車ごと崖から転落しほぼ即死だった。
今だ、事実を認められない瑠璃は両親の墓の前に座り込んでいる。
ふと、瑠璃の頬に冷たい雫が滴る。
虚ろな瞳で空を見上げると、何時の間にか雲が走りどんよりとしている。
一時もしないうちに小雨が降り始めた。
彼女の長い髪を、涙に濡れた頬を、その小さな身体を容赦なく雨は打ち続ける。


「…私も…連れてってよ。」


そっと呟いた。誰に言うとも無く…。


「そんなに死にたいのか?」

「ぇ?」


あるはずの無い返答。
彼女はゆっくりと振り返る。
其処には一人の長身の男。
全身を黒で統一しその髪もまた闇の様に黒い。
長い髪を一つに結んだ男は無表情に彼女を見つめる。


「死神?」

「神ではない。」

「誰?」

「…死にたいのか?」

「…死んだって誰も私のことなんか心配しないもの。」

「そうか。」


そう短く言うと男はゆっくりと彼女に近寄ってくる。


「なにをするの?」

「苦痛を消してやる。」


彼女の前に傅くと冷たくなった頬に両の手を触れる。
そっと男は彼女の額に口付けをした。


「瑠璃。」

「ぇ……なんで名前…っ!!!」


滴るアカ。
雨に流れる赤い雫。


「っあ…やっ…。」


男は彼女の細い身体を抱きすくめその白い首筋に鋭い犬歯を立てた。
動脈が破れ流れ落ちる鮮血。
体内から無くなる喪失感。
それと共に感じる快感。


「ぃやぁ……。」

「…苦痛は消える。」

「っ…。」


ゆっくりと彼女の首筋から顔を離した男の瞳は血のような赤に染まっていた。
男は自分の腕をその犬歯で切り裂くと傷口を彼女の口元に運んだ。


「なにを…。」

「一人はいやなんだろう?」

「…………。」

「飲め。そうすれば永遠に孤独ではなくなる。」


そっと。
彼女は彼の傷口に唇を寄せる。
始めは恐る恐るだったが、次第に激しく血を啜り始める。
彼女の頭を支え、口調とは違う優しい手付きで瑠璃の髪を梳く。


「ぁ……。」


傷口から離した彼女の唇は彼の血で汚れていた。
男は彼女の頬にキスをしそのまま舌で唇の周囲の血を舐め取る。


「ん…。」

「お前は一人ではない。」

「ふ…ん……。」


そう呟くと男は彼女の唇に深く口付けた。
それはとても甘美なもので、血液による喪失感と体内を巡る異物感に彼女の意識は途切れた。














「ん……。」


瑠璃はゆっくりとベットから起き上がる。
まるで昨日までが夢だったかのように。
ただ…今彼女が寝ているベットは見知った自分の物ではなかった。
柔らかいシーツは漆黒。
彼女の着ていた服も喪服ではない。
真っ白なネグリジェ。


「ここ……何処?」


部屋は薄暗く、時間の感覚も無い。
赤や黒の蝋燭が点々と灯されているのみだ。


「瑠璃。」

「っ!!」

「目が覚めたか。」

「貴方…昨日の…。」


闇の中から溶け出たように男がベットのすぐ側に佇んでいた。


「どういうことなの?此処は何処?貴方は私に何をしたの?」

「死にたかったのだろう?」

「…私…死んだ?」


クスリと男は笑い彼女の頬に触れる。
男の手はゾクリとするほど冷たい。


「半分死んでる。」

「半分?」

「お前を一人にしないと約束した。」

「??」

「ただし…お前は私の物になるのが条件だ。」

「約束って…?」

「お前の親からだ。死に際にな。」

「!!」


彼の話はこうだった。
両親は死に際に彼に頼んだそうだ。


『あの娘はとても寂しがりやなの。私達が居ないと生きていけない‥』

『頼む。どんなものでもやるからあの娘を一人にしないでくれ。』


”どんなものでも?”

『あの娘が寂しくなければ…』

『あの娘を…。』


”……分かった。”


彼女の瞳から一筋の涙が流れ落ちる。
彼はその涙を舐め取りながら瑠璃を優しく抱き締めた。


「お父さん…お母さん。」

「お前が生を望むなら私とは共に在れない。だから聞いた。死にたいのかと。」

「私は…一人は嫌だ…寂しいっ。」

「そうだな…。」


彼の服を掴みながら彼女はとめどなく涙を流した。


「貴方は…何者なの?」

「…血を好む不老不死…分かるか?」

「……ヴァンパイア?」

「あぁ。」

「嘘…そんな。」

「それならこの後は?私の心音は聞こえるか?」

「あっ…。」


彼の白い指が彼女の首筋に残る二対の傷跡をなぞる。


「嫌か?こんな化物は…。」


苦笑しながら問いかける彼を見る。
彼の瞳は何処か憂いを帯悲しげだった。


この人はずっと一人だったの?
彼も寂しかったの?
どうせ私も一人。
それなら永遠に側に居てくれる人なら…


「ううん。嫌じゃない。」


そういうと始めて彼女は自分から彼に抱きついた。
彼は瞳を細めそのまま彼女を押し倒した。


「っ!……なに?」

「永久に在る契りを。」

「あっ……。」


昨日彼は彼女を完璧なヴァンパイアにしていなかった。
もし彼女が自らを否定し生を望んだ時の為に。
彼の意図を知り瑠璃も暴れる事はしない。


「貴方の…名前は?」

「ドラキュラ・ドラクル‥色々ある。」

「それじゃあどれがいいの?伯爵様?」


クスクスと彼に髪を梳かれ笑い声を漏らす。
彼はそんな彼女の首筋にキスをしながら低く呟いた。


「お前の好きなように呼べ。瑠璃。」

「ん…ぁ。」

「永久に…共に居よう…。」


彼の牙が深く深く彼女の首筋に刺さった。
意識が混濁していく中瑠璃は彼の微笑んだ顔を見た気がした。
































後記

浅倉藍司様に捧げます!
相互記念に書かせていただきました〜”吸血鬼もののラブスト風”…
なっ何か無駄にシリアスモードだったような;;
そっそれになんか変に微エロ風味(爆)
藍司様!!すいませんっ;;しかも無駄に長い;
ともかこんな駄文しか描けねぇ奴ですがよろしくしてやってください
ありがとうございました!