死神奇談 =3=

死神

〜 JAIL BIRD 〜


































シャラン、と。

手足を繋ぐ鎖がまるで鳥の鳴き声のように響いた。
今日もまた悪夢が私を包み込む。


「…おはようございます。さん。お食事の時間ですよ。」


赤屍は音も無く部屋に入るとベットに寝かされているに歩み寄った。
は重たい目蓋をゆっくりと開けて光の無い瞳を向ける。


「………おはようございます。蔵人。」

「はい。今日も可愛らしいですよ…私の。」


紡がれた挨拶に赤屍は口元を綻ばせ綺麗に笑った。
は小さく溜息を付いて朝が来た事を呪いながら起き上がった。


シャラ…


涼やかな音を響かせ鎖が鳴る。
普通の金属では無いらしく重みも殆ど無い無機質な鈍色の鎖。
重みはないが非常に頑丈で何度引き千切ろうとしても無駄だった。

赤屍はの両手と両足を拘束する鎖を見て白い指先を伸ばした。


「痛っ…。」

「擦れてますね。痛かったでしょう?」


胸ポケットから取り出した鎖と同じ色の鍵を差込彼女の足枷を外した。
ベットサイドに傅きの白い足首に赤い舌を這わせる。
傷口の痛みとほんの数時間前まで赤屍に抱かれていた時の熱が蘇る。


「そろそろこれも外さなくてはいけませんね。」


赤屍は徐に立ち上がると残りの足枷を外した。

シャラ‥

左手。右手、と。手械も外される。
は数ヶ月ぶりに自由になった手首を擦りながら赤屍を見上げて笑みを浮かべた。


「ありがとう…蔵人。」

「えぇ。さぁ食事にしましょう。」


赤屍はを軽々と抱き上げると部屋を出て行った。


の瞳に光が宿る事は無くそこにあるのは冷静な絶望。
















連れてこられた時は殺されると思った。
本当に怖くて怖くて堪らなかった。

仕事からの帰宅途中にいきなり拉致されて拘束された。
そして…荒々しくも優しく彼は私を抱いた。

それから甘い拘束は続き数ヶ月後になると私はすっかり彼に慣れてしまった。
拒絶して恐怖して拒否するよりは、慣れてしまった方が‥彼を愛する方が楽だったから。

でなければ私の心はきっと壊れていただろう。

此処は鳥籠。

私と言う名の鳥を捕らえて逃さない。
彼と言う名の籠の中。















。愛しています。」

「私も蔵人を愛してる。」


そう、これは鳥籠の中の睦み事。
死ぬまで続く永遠の拘留。
























後記

JAILは元々拘置所、刑務所、投獄等の意味がありますが、JAIL BIRDで鳥籠の意味になる創語です。
普通にBIRD CAGEでもよかったんですがこっちの方がなんとなく好きなのです。
部屋自体‥赤屍さん自体が籠なのです。








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