この夜が明けるまで… ドリー夢小説






















柔らかな満月が照らす、街から離れた閑静な丘。
ふくらはぎの丈まで伸びた草がさわさわと揺れ、静寂の中に波紋を描いていた。
――と、一定の秩序が保たれた空間を切り裂くように剣を重ねる音が広がる。
赤と青、対照的な色合いの、しかし容姿はまったく同じ男2人が火花を散らし、互いの武器をクロスさせている。
鉢金の奥にのぞく瞳の色は、どちらも戦慄すら覚える凍てつく黄金。

そんな彼らに『危ねぇから下がってろ』と釘を刺されたは、半ば諦めモードでソルとロスを見守っていた。
(“同属嫌悪”ってやつかなぁ・・・)
自分と同じような存在に大して嫌悪感を覚える、という感情――この場合は“ほぼ同じ存在”なのだが。
・・・だから、こんな喧嘩などを始めてしまうのか。
(まぁ・・・あそこでソルが怒ってくれたのは・・・ちょっと嬉しいけど)
そっと、ロスに口づけられた場所に触れる。
ほんのりと頬を染めながら、は思考をめぐらせた。

いくらコピーで多少の違いがあるとはいえ、ロスは元々はソルなのだ。
そんな彼が自分にキスをした――。

(それに、『テメェとは違って我慢はしねぇ』って・・・ソ、ソルも・・・)

自分にたいして、そーゆうコトをしたいと思っている・・・と、いうこと?

(あ、ありえない! それこそ絶対ありえないよーっ!!)
ショートしそうな思考を抱えて、ついその場にしゃがみ込んでしまいたくなる。
とはいえ、すぐそこでマジバトルを繰り広げているW悪男がいるために危なくて無理そうだが。

少し目を離していただけなのに、ソルとロスの戦いはかなりヒートアップしていた。
激しい殴打と斬撃の応酬が交わされているのだが、元は同一人物であるため互いに相手の手の内が読めるらしく、試合の流れはほぼノーダメージ状態で互角の対戦だ。
ゲーム中の言葉を使えば、両者共にドラゴンインストール状態でガンフレイムやタイランレイブを連発、しかもロマキャンを多用しているかのごとく荒っぽい身のこなしで暴れまわっている。
流石に鉢金を捨ててリミッターを全解除、とまではしないので、一帯が焦土と化すことだけは免れているのだが。

「・・・・・・やっぱりちゃんと止めておくべきだったかなぁ・・・」
いつまでも終わらない戦いに見てるこっちが疲れてきて、は深々と頭をうなだれた。


しばらくそんな状態が続いていたが――やがて、ロスがソルのスキをつくように姿勢を低くした。
(あれは、グランドヴァイパー?)
そう考えたの予想はどうやら当たりらしく、彼は炎を纏って大地を駆ける。
それを防ぐべく、ソルも姿勢を低くして守りの体勢を取った・・・・・・のだが、何故かロスはその手前で宙へと高々飛び上がってしまった。
(な、なんで・・・?)
あれでは着地前後に反撃を受けてしまう・・・などと思っていただが。
(・・・・・・あれ?)

まるで放物線を描くように降りてくるロス――その先にいるのは。

「・・・・・・・・・・・・?」
!!」
焦ったようなソルの声にニヤリと笑い、ロスが空中で青い封炎剣を振るう。
途端、紅蓮の炎がソルとを遮るカーテンとなり、丘の上に燃え上がった。
煌々と大地を照らす焔に怯む、その前に金色の髪を翼のようにはためかせて降り立つロス。
妖しい光を宿す金の瞳が、楽しげに細まる。何も言えず魅了されたように立ち尽くすの身体を逞しい腕が捕らえた。
「あっ」
「――来いよ」
獲物を手中に収めた肉食獣の面持ちでもって、ロスはの身体を抱き上げる。
いわゆる“お姫様だっこ”に顔が赤くなったのだが、
「・・・っ、ちょっと待・・・ッ!」
ハタと彼の意図に気付いて制止の声をあげるが、後の祭り。
有無を言わさぬスピードでロスが走り出し、悲鳴が長く尾を引いた。



(・・・・・・クソ・・・・ッ)
感情のままに燃えさかる炎を更なる勢いの焔で打ち消し、ソルは金色に染まった眼を忌々しげに細めた。
自分との戦いを目くらましに、を連れ去る――最初から、ロスはこうするつもりだったのだ。

『テメェとは違って我慢はしねぇ』

不適に笑ったロスの言葉が思い出される。
自分であって、自分ではない存在。彼が言う、『我慢』――それは間違いなく、に対してソルが抱く感情と衝動を押さえてつけているということ。
そうだとしたなら、の身が危ない。
苛立ちをそのままに、彼は封炎剣を握り締めた。





* * *





先程までとは違ってひどく静かな宵闇の中、月色の髪をたなびかせて走る男と、それに抱きかかえられている少女の姿がふたつ。
「・・・・・・ちょっと・・・ロス・・・ッ!」
嫌がるようには身をよじり、逞しい腕から逃れようとした。
「暴れんなよ」
走る速度をそのままに、ロスは腕の中に視線を落とした。・・・と、そこにある顔色が青ざめていることに気付く。
?」
慌てて立ち止まり、彼女を地面に下ろしてやる。
は大きく深呼吸をしながらロスの許から這い出し、がっくりとうなだれた。
「気持ち悪い・・・」
「あ?」
「・・・・・・酔ったみたい・・・」
ドラゴンインストール済のロスに抱きかかえられたまま、全速力で延々走られたのだ。
加えて道は“舗装”という2文字とは程遠いものである。酷く揺れ、車酔いならぬドライン酔いを引き起こすのも無理はなかった。今すぐどうにかなるワケではないが、気分は最悪である。
落ち着こうとひたすら深呼吸を繰り返すだったが、ふいに背中に温かい感触があって顔を上げた。
「・・・悪かった。大丈夫か?」
そこにあったのは、気遣わしげなロスの顔。
「うん・・・ありがと」
そっと労るように背を撫でる大きな手。そのやさしい仕草に、ほっと息をつく。
しばらくそうやってが落ち着いた頃、またもや彼女の身体は筋肉質の腕に引き寄せられた。
「ま、待って・・・!」
「もう走らねぇよ、安心しな」
下ろして、と騒ぐを抱いて彼は草原の下から無骨な顔をのぞかせる岩のところまで歩き、それにもたれかかるようにして腰を下ろした。
「ここいらで良いか・・・奴はしばらく来ねぇだろ」
言いつつ、自分の膝の上にを座らせ、後ろから抱きしめるようにすっぽりと彼女の身体を両腕で包み込む。
「ちょ、恥ずかしいんだけど・・・!」
まるで小さな子どもが父親か誰かにそうされるような体勢に、悪かった顔色に朱が入った。
それを面白そうに眺め、ロスはニヤニヤ笑って彼女の頭に顎を乗せてきた。
「良いだろ。別に誰かが見てるワケでもねぇ」
「だ、だけど・・・っ!」

恥ずかしい。とても恥ずかしい。
その理由が、咄嗟にの口から飛び出してくる。

「だけど、ソルはこんなことしないし・・・!」
「・・・・・・・・・」
途端、ロスがピクリと動いたのがわかった。
どうしたのだろうかと彼の表情を振り返ろうとしただが、拘束されるように抱きしめられているこの状況ではままならない。
しばらく、静かな草原に沈黙が続いた。

「・・・・・・まぁ、そうだろうな」
ロスの体温にの身体が馴染み始めた頃、穏やかに彼が口を開いた。
「オレはあいつのコピーだが・・・多少、違うようにできてるからな」
「違うって・・・?」
問いかけるの目の前に、鏡が取り出される。ロスが現れた原因の、あの古ぼけた手鏡だ。
「この鏡には“複製”の法術が封じられている」
「だから、ロスが・・・?」
「ああ。だが、あいつは気付かなかったようだが・・・その術は不完全なモノだ」
だから容姿が違う存在が複製されたのだ、とロスは言う。
もしこの鏡に封じられた法術が完全なモノだったとしたら、それこそ色彩から何までまったく同じソル=バッドガイが2人存在する事態となっただろう。
「じゃあ・・・法術が不完全だから、ソルとは違うから・・・ロスはにこーゆうことしてるの・・・?」
「かもな」
「・・・なんだ・・・」
ビックリしたー、とが脱力する。
「どうした?」
「んー・・・ちょっと安心したっていうか、なんていうか・・・」
そしてちょっとだけ、残念だったというか。
やや赤い頬をそのままに、ロスの腕の中で息をつく。

大好きだと思うソル。
そんな彼が自分を抱きしめたりしたいから、ロスもそうしてくる・・・そう勘違いしていたけど。

(なんだか・・・複雑なんだよね・・・)

ホッとしたような、安心したような気持ちと・・・それから、がっかりしたような、残念なような気持ちと。
頭の中がごちゃごちゃしてきてしまう。

「・・・何、考えてるんだよ」
気遣わしげに声をかけてくるロスにただ首を振って答える。
彼のあたたかい体温が、とても心地良かった。


(・・・・・・ホッとしてやがる)
腕の中に大人しく収まっているに、なんとなく面白くないような気分になって空を仰いだ。
どうやら彼女は“ソルとロスとは違う”ことから、ソル自身はこういった行為に及ばないと解釈したらしい。

――あいつが心の底で彼女に対し、どんなことを考えているのか教えてやろうか?

一瞬そう思ったが、やめた。
そんなことをしてまたグルグルと考えこんでしまうの姿を見るのは忍びないし、何より彼女を混乱させるのは彼の本意ではない。
(・・・まったく、結局“違う”っつっても、根本的なところはあいつと同じなんだな・・・オレは)

ソルがに対して滑稽なほど必死にしている“我慢”。
それは、必要以上に彼女に触れたり、混乱させるようなことをしない、ということ。
その我慢さえなければ、は今頃どうなっていたことか。

(まぁ、しゃあねぇよな・・・)
彼女のことを、自分たちらしくもなく大切に想っているから・・・だからこその『我慢』。

穏やかに笑みを浮かべ、ロスは遠く草原の彼方の空へ視線を向ける。
闇色の藍に薄紫の光がにじむ、東の空。
――やがて、夜が明ける。



それまで大人しくロスの腕に収まっていただったが、ふいに自分を抱きしめる力が強くなって身じろぎした。
「ロ、ロス・・・! 苦しいよ!」
「ああ」
「ちょ・・・はーなーしーてーっ!」
耐え切れなくてジタバタと暴れるが、当然彼に力で勝てるはずがない。
そんなに対し、ロスは無言のまま力を緩めることなくを抱きしめ続ける。
「あと、少しだけ」
固くを抱きしめたままロスがつぶやいた。
「この夜が明けるまで・・・このままでいさせてくれ」
「・・・・・・・・・」
先程までの不遜な態度とはガラリと方向転換した、切なげな懇願。
「どうしたの・・・?」
何かただならぬものを感じて、彼を見上げる。
東の空に現れた光を受け、金糸の髪が太陽のように煌めいた。



とロスに追い付いてみたら、彼女は自分のコピーの腕に囚われていた。
(あの野郎・・・!)
まだ自分に気付いていないらしい2人を引き剥がそうと、殺気のような感情がこみあげる。
1歩を踏み出しかけたソルだったが、
「・・・なぁ」
ロスが発した言葉に動作を止めた。
「迷惑だったろう。突然オレが現れた挙げ句、散々振り回されて」
「そんなこと・・・」
否定しようとして口ごもってしまう。その様子にロスがクツクツと楽しげに笑う。
「嘘がつけねぇたぁ、本当に素直だなぁお前は」
ちらり、と青の視線がソルに向けられる――気付かれた。
だが、どういう風の吹き回しかロスにその場から逃げ出す気配はない。
「・・・オレらとは随分違う・・・」
ため息混じりに言葉が吐き出される。
その意味を探してが首を傾げた。
「ロスと、ソルと・・・ってこと?」
「ああ」
青い目が細まり、やがてゆっくりと閉じた。
「大人には色々と事情ってモンがあってな。そうそう素直ではいられねぇんだ」
「・・・・・・それって、が子どもだって言いたいの?」
不機嫌さをうかがわせる声音でがボヤく。
それにまたも笑い、ロスは穏やかに言った。
「だが、そう簡単に素直な気持ちってのは捨てられねぇんだ。だから、オレはあいつの代わりに・・・」
「・・・っ、茶番は終いだ」
ロスが言わんとするものが言葉となる前に、声をあげる。
「ソル!」
嬉しそうにが彼を呼んだ。
それに対し、ロスは無言で不敵な笑みを張り付けるばかり。
だがその青い目は雄弁に物語っているかのようだ。『お前の本心など、手に取るようにわかる』――と。

そして、それにより何故自分がロスに対し激しい嫌悪のようなものを抱いているのか理解した。

これは恐怖だ。自分の本心をありのままに知るコピーという存在が、そのあらいざらいをに告げてしまうのではないか、と・・・。
醜い感情を彼女に知られてしまうかもしれないという恐れだ。

「やっとお越しか、保護者様?」
「・・・御託はいらねぇ。を返せ」
抑揚のないソルの声に、ロスは笑い声をあげた。
「何がおかしい」
「いや、我ながら余裕のない面ぁしてると思ってな」
ひとしきり笑い――そして、彼はどこか寂しげな表情を見せた。
「・・・安心しろ。茶番はもう終わりになる」
東の空が、一層明るくなった。



「・・・どういうこと?」
切なげなロスの口調にただならぬものを感じ、は彼を見上げた。
「・・・・・・オレが出てくる原因になった法術が“不完全”だって話はしたな」
だから容姿も性格も、きちんと複製できていない。
「“不完全”なのは、何もそこのところだけじゃねぇ。オレという存在そのものが・・・」
不完全なんだ。
彼がそうつぶやいた直後、東の空にまばゆい光が現れた。日の出だ。

そして――不意にロスの身体が陽炎のように揺らめき、透け始めた。

「ロス・・・!?」
「・・・・・・不完全な法術じゃあ、複製するにしても限度がある。そして、複製してできたモノをこの世に留めておく力もな」
丁度、夜明けがタイムリミットだったらしい。
そう言う口調はまるで最期の別れでも口にしているかのよう。
絶句するに苦笑し、そしてロスは自らのオリジナルに視線を向けた。
「だから『我慢はしねぇ』んだよ、オレは」

オリジナルが――本来の自分が持っていた使命も、誓いも、矜持も、自分はすべて果たすことなど出来ないと、初めからわかっていたから。

限りある命。
それが、オリジナルであるソルとの最も大きな相違点であった。

「・・・・・・死んじゃうの・・・?」
これ以上ないという程、大きく見開かれた黒の瞳。
ロスからの返答はあっさりとしたもので、ソルとはまったく違うおどけた表情で肩をすくめてみせる。
その間にも、陽が昇ると逆比例してロスの身体はどんどん透明に近付いていく。
「存在しなかったモンが、元の状態に戻るだけだ。“死ぬ”とは言わねぇよ」
「だけど・・・だけど、消えちゃうんでしょ!?」
そんなの嫌だよ、そう言っての頬に涙が伝った。
みるみる薄れていくロスの身体を少しでも留めようと、小さな手のひらが彼に向かって伸ばされる。
・・・だが、それは虚しく宙を掻くようにロスの消えゆく身体を通り抜けた。
「・・・・・・ッ」
「・・・迷惑だったろう? そんなに泣くんじゃねぇよ」
「そりゃ、確かにちょっと困ったけど・・・! だけど・・・」
くしゃくしゃに顔を歪ませ、幼子のように泣き始める彼女。
「でも、せっかく会えたのに、生きてるのに・・・死んじゃうなんて、嫌だよぉ・・・!」
「・・・・・・・・・」
の様子に一瞬困ったように笑い、そしてロスは無言で自分を見ているオリジナルを見やった。
ロスの青い目ににじむ、彼が言わんとしていることに気付き、ソルはやや眼をすがめる。

『こういうヤツだから、守ってやりたいんだろう?』


――そして、陽が完全に昇りきり、地上のすべてを明るく照らす。

「・・・・・・じゃあな」
たった一言と共に微笑んで、一晩中2人を振り回してくれた男は大気に溶けて消えた。
今までそこにあった存在を悼むこともできず、ただうつむいて涙を流す少女にソルは手を伸ばした。
何も言わずに涙で汚れた顔を胸に押し付けると、僅かに嗚咽が聴こえる。

危険因子が消えた安堵と、彼女を悲しませている胸の痛みと。
酷く複雑で重い気持ちがソルの心に波紋を投げかけた。





* * *





宿に連れ帰ってもはしばらく泣いていたが、やがて深い眠りについた。
よほど疲れたのか、夕暮れ時が近付いても泥のような眠りから覚める気配はなく、ソルはただ手持ち無沙汰に手配書の束との様子を交互に見ているしかなかった。

そしてオレンジ色の残光を置いて日没となり、月が青白い顔を主張し始める。
内容のすべてを暗記してしまうほど手配書に目を通し終え、ソルはと彼女が眠る傍にあるないとテーブルとに視線を向けた。
古ぼけた手鏡が、部屋の天井を映している。
妙な法術がかけられた、つい昨晩まで自分たちを振り回してくれる原因となったモノ。
なんとなく感慨深くなり、手に取った。
(・・・・・・今考えてみりゃあ、アレが俺なりの理想の在り方かもしれねぇな・・・)
容姿と性格はともかく――使命や誓い、矜持などをかなぐり捨てて本当の意味で“自由に”生きること。
深層心理の奥底で、そんな生き方を求めている自分がいるだろうことは容易に分析できる。
それに、以前『鏡は人の心をも映す』という話を耳にしたことがある。
単なる迷信だと馬鹿馬鹿しく思ったが、自分の複製を見た今ではあながちデタラメではないと感じる。

『こういった奔放な生き方ができたら』
――もしかしたらロスは、そんなソルの心が具現化した存在なのかもしれない。

「・・・馬鹿馬鹿しい」
ちいさくごちて、口の端に笑みをのせての髪を梳いた。

そんな時、鏡面に冴えざえとした月光が映りこんだ。
直後、手鏡から見覚えのある輝きが発せられる。
「・・・・・・・・・!」
昨夜とまったく同じ状況に、ソルは不覚にも呆然とそれを傍観してしまった。




「・・・・・・ん・・・?」
何か騒がしい。誰かがすぐ近くで怒鳴っているようだ。
(もっと寝てたいのにー・・・)
は顔をしかめてくるまっているブランケットを顔まですっぽりと覆うように引っ張ったが、
「・・・・・・んで、・・・・・・・・・出てくるんだ、テメェは!?」
「仕方ねぇだろ、そういうプログラムが・・・」
ステレオに聴こえるまったく同じ声に、一瞬で意識が浮上した。
目を開き、はねるようにベッドから起き上がる。
――と、目の前にあったのは色合いだけが対照的な同じ顔の男が2人、睨み合っている光景であった。
「ロ、ロス・・・!?」
「よぅ、起こしちまったか?」
飄々とした口調で青い瞳がこちらを振り返った。間違いなく、彼は日の出と共に消えてしまったロスである。
「え・・・何、コレって夢・・・?」
戸惑うにソルがおもいっきり顔をしかめてのたまった。
「現実だ。ふざけたことにな・・・!」
苦虫を噛み潰したとは正にこの顔であろう。
頭の上にクエスチョンマークを浮かべるに、ロスはガリガリ頭をかきつつ「それがな・・・」と口を開いた。
「確かに、オレを生み出した法術は不完全だったんだが・・・オレが消えたからと言って、鏡の法術そのものがなくなるワケじゃあねぇんだ」
「それって・・・」
「つまり、昨晩と同じ条件を満たせば根源を絶たねぇ限り、何度でもコイツが出てくるってコトだ!」
「テメェ・・・ヒトをゴキブリか何かみてぇに言うんじゃねぇ」
「似たようなモンだろうが、大概にしねぇと鏡にガムテープで目張りするぞ」
クソ忌々しい、とソルは不機嫌オーラを垂れ流しにしている。このままでは昨晩同様、封炎剣を持ち出して試合・・・ということになりそうな雰囲気であった。
(・・・・・・なんだかなぁ・・・)


ロスとまた会えて嬉しいような、あれだけ泣いた自分が馬鹿みたいなような。

複雑な気分と共にどっと疲労感が押し寄せ、最早2人の喧嘩を止める気力もなく、はただ乾いた笑いを浮かべたのだった。
























後書き

なんだろうね、このオチは。
取り留めがなさすぎ・・・ってか、ただ“ソルの色違いが書きてぇ”って思ったのが執筆の動機なんですが(去ね)
ちなみにロスさんは家庭版イグゼクス・SP+Pボタンで出てくる、別名「カイ色ソル」です。
予想外に長くなりすぎたのでとりあえず前後に分けました。
終始コメディで突っ走るつもりが、後半暗くなりましたが;
個人的には前半部分の混乱っぷりは好きになれるのですが(^^;

それでは、これからも当サイトをよろしくお願いしますv











続きになります。
あぁやっぱりいいですねぇvv夜月さんの小説はほんっとに大好きですvv
他にもフリー夢あったような…
フフフ貰ってきちゃおうかなvv